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ビスケット通信

小説(とたまに絵)を書いてるブログです。 現在更新ジャンルは本館で公開した物の再UP中心。 戦国BASARAやお題など。

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私は哀れですか 愚かですか(信光/戦国/劇場版ラス トの話/お題)




 槍のように突き出た地面が崩壊していき、魔王再臨の為の構築世界全てが崩れていく。
 魔王の妹、市に霊魂を集めさせ、漸くここまできたというのに。
「ああっ、そこは最後に食べて、あっ」
 その最大の協力者、市が全てを台無しにしていった。
 斬られた半身を庇うも出来ずに、市の黒い手によりまるで鴉が死体を啄むかのように、じわりと生命が抜かれていく。
「あっ、あ…アァア゛ーッ」
 そして冥界に引き摺り込まれていく中、遠くの彼方で四つの光が信長を冥界に葬り返すべく、それぞれが民を友人を記憶、或いは国を守るべく、戦っているのが見えた。
 彼らを見つめ、思わず溢れた失意の笑み。

 ――己は何をしたかったのだろうか?

 今更に、そんなどうでもいい考えが浮かんでしまう。一応は僧であるからに、そんなことを考えてしまうのだろう。
 己は――魔王信長を復活させ、信長をこの手で再び殺めたかった――というのが一番の望みであったのだが、信長を殺めればまた信長のいない世界が戻る。また空虚な日々が続くだけだというのに。
 そんなことは初めから分かりきっていた事だというのに。
 それでも、それでも信長を再びこの世界に目覚めさせたいと思った。
 ただ少しで良い、信長の、あのおぞましいという例えでは生温すぎる亡者の威圧感、瘴気、煮えるような憤怒の一撃、すべてが全て、体の奥底から興奮させてくれる信長を感じたかった。
 ただそれだけ。
 僧になったのも信長を復活させる儀式を完璧にさせるためで、ただ信長を復活させたくて、ここ数年を生きてきた。
 だけど、本当は―――本当は、すがれるものが欲しかったのかもしれない。
 信長を失った日々は、満たされなかった。
 だから謀反を興した後、信長が生きていたという事実は己は歓喜に狂えるほどにも、興奮した。また信長と一戦交じり合えることが出来るのだ、満たされることが出来るのだ――と。
 なのになのに、本当に信長が現世から居なくなってしまってから、また満たされない日々が戻ってしまった。同じ過ちを繰り返してしまった。僧になって、信長を蘇らせ、また殺め――それもまた同じ過ちを辿る。
 同じ繰り返し。
(嗚呼、愚かですね、私)
 そう今更思った。
(もう…死ぬのですね)
 このまま冥界に行けば、信長に会えるのだろうか?
 再び、終わりのない興奮を味わえるのだろうか?
 そしたら、満たされるだろうか?
 すがりたいのも満たされたいのも、貴方に会えば埋まるだろうか?
(信長、公)
 人間風情の考えた俗世間の偏見が正しいのならば、信長とすぐには会えなくとも、きっときっと同じ世界に堕ちるだろう。
 だって私と彼は、数多くの命を奪ってきたのだから。己は僧になったとはいえ、信長を復活させようと謀った大罪があるのだから。
 きっと会える。
 否、確実に。


(ねぇ、信長公)
(貴方のこと、好きだった気がします)
(生きてるうちに気付けなかった)
(そんな私、哀れですか?愚かですか?)
(或いは、可哀想だと思ってくれますか?)
(ねぇ、信長公)
(貴方なら、きっと―――)




――終――
2011/7/11(月)
【私は哀れですか 愚かですか】
御題配布…月と戯れる猫 様
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自己紹介:
うえのイラスト画像はいただきもの。
オンラインでは執筆を
オフラインではイラスト中心に活動中デス
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