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ビスケット通信

小説(とたまに絵)を書いてるブログです。 現在更新ジャンルは本館で公開した物の再UP中心。 戦国BASARAやお題など。

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空振り/ヒバツナ


春も過ぎほんのり暖かくなった頃…

「ツナ」
「なんだよリボーン?」

悪魔の赤ん坊と呼ばれている赤子は、一冊の絵本を手にしている
赤ん坊なのだから絵本を持っていても可笑しくはないが、その赤ん坊は黒いスーツを着禍々しい雰囲気を放っていた
そのあまりにも似つかわしくない組み合わせに、マフィアの跡取り候補ボンゴレ十代目こと沢田綱吉は不審に思う

「…絵本?」
「あぁ」

渋々受け取り、タイトルをまじまじと見た
が、海外の絵本であったため、文字が読めない

「…何語だよ」

仕方なく中身を見て判断しようと絵本を開こうとした時、ツナは用事があった事を思い出した

「ってこんな事してる場合じゃないよっ!今日は山本の試合応援しに行くんだった!」

ドタバタと急いでパーカーを着、身仕度を済ませる

「とっとと行け」
「リボーンが止めたんだろ?!全く…」

部屋を出て階段を駈け降り、靴を履いているとリビングのドアが開き、ツナの母奈々がおたまを手にしながら顔を出した

「あら、つっくんどこに行くの?」
「山本の試合に応援しに行くんだ、夕飯までには帰ってくるから。行ってきまーす!」
「車に気をつけるのよ~」

母の言葉も鵜呑みにドアを勢い良く開け家を飛び出た





「おっし!ホームランだ」

勢い良くホームランを打ち嬉しそうに一塁、二塁と走っていき、ベースを踏んで山本は澄みきった笑顔で笑った

「やっぱ山本は凄いなぁ…それに比べてオレはダメダメだもんな…」

以前体育で野球をやった時、空振り3ストライクバッターアウトの光景を思い出して、がっくりと肩を落とした

「ツナはやれば出来るって!今度俺と練習すっか?」

自分のバックを漁りながら、ツナの方を向きニコッと笑いかけながら言った

「山本…ありがと!」
「はははっ友達だからな!あ、やべ…タオル忘れたわ。ツナ、マネージャーに貰ってくるから待っててくれるか?」
「え?あ…ちょっと、待って」

少し苦笑いしてから、マネージャーの元に駆け寄ろうとした山本を、引き留めた

「ん?どうした、ツナ?」

足を止め、不思議そうに後ろを振り返る

「その、良かったらオレのタオル使ってよ」

はにかみながら、腰に挟んでた青いタオルを取り、軽く畳んで山本に渡す
一瞬驚いた顔をしたが、山本はすんなりと受け取り、軽く礼を言う

「お、サンキューな!助かったぜ。でもツナは良いのか?」
「うん、オレは平気だから」

手をわたわたと左右に振り、大丈夫だと示す

「そっか、でも水分だけはキチンと取れよな!んじゃ、オレはチームに戻るわ」
「うん」

手を降って見送った後、ペットボトルを取って蓋を開け、水を一口飲んだ
空を見上げ、雲一つ無く澄みきった空に、心がすーっと涼しくなるのを感じる
いつも争いや仲間の騒動に巻き込まれてばかりだったツナは、少しばかりの安らぎを楽しんでいた

「雲一つ、無いなぁー…そういえば、雲雀さんに最近会ってないな…」

雲の守護者であり、並盛の秩序である、並盛中風紀委員長の雲雀恭弥を思い出した

「きっと今日も見回りだろうなー」
「そうだよ」

聞こえた声に驚いて後ろを振り向くと、風か吹いた勢いで、桜がひらひらと舞い落ちる
土手の上に、威風堂々と立つ雲雀の姿があった

「ひ…ばりさん…」

少し怯えながらも、ベンチの近くに歩いて来た雲雀を、恐る恐る見上げる

「やぁ。野球観戦かい?」
「あ、はい…山本の応援に」

その言葉に、雲雀の眉間にしわが若干寄る
ツナは少し顔を伏せて、雲雀の機嫌を伺いながら答えた

「…ふーん」

相変わらず興味無さそうにしながら、ツナの隣に音も無く静かに座った
立ったまま話すとばかりに思っていたツナは、予想外の事に驚きながらも遠慮してベンチの反対側に少し寄ると、雲雀がツナの腕を掴んだ
その手は、やっぱり少し冷たい

「…なんで離れるの?」
「え…あ、すいません」

不機嫌な声で言われ、怯えながら、慌てて元の位置に座り直した
触れるか触れないかしか間が空いてない距離に、ツナは緊張する

「………」
「………」

その様子を、雲雀は無表情に、でも心の中では愉快に見つめた

「あ…あの、雲雀さんは、今日は見回りですか?」

沈黙が気まずくなり、話題を持ちかけてみる

「そう。春は浮かれた輩が多いからね…いつも以上に見回りを増やしているんだよ」
「そ、そうなんですか」

雲雀に見つかった人達を可哀想に思いながら、相づちを打つ

「君もそうならないよう気をつけなよ」
「はっ、はい…」

もしそうなったら…と考えて、その結末に一瞬ゾッとした

「…本当は僕がずっと見張っておくのが一番なんだけど」
「ひ…雲雀さんっ?!」

雲雀の小さく喋った事に不審な言葉が聞こえた気がし、寒気がし身を縮めて驚くと、雲雀はにやっと笑いながら「冗談だよ」と付け加えた

「え……」
(雲雀さんが言うと冗談に聞こえない…)

拍子抜けたように、肩の力を抜くと雲雀が冷めた口調と視線で問う

「…何、嫌なの?」
「ひぃっ!そんなことはっ!…あっ!」

涙目になりながら、条件反射で答えてしまったことに慌てて自分の口を押さえた

「クスクス…じゃあ一生見張ってあげるよ」
「もう冗談は結構です…」

相変わらず大袈裟な事を言う雲雀に、ツナはため息をつきながら答えた
一方、雲雀にとっては一代決死のプロポーズだと思っていたが、ツナには全くそうは受けとめられていないという毎度の事に、雲雀は呆れたようにため息をついた

「ねぇ、いい加減誰の物になるか決め…」
「あ、雲雀さん」
「くっ……今度は何」

大事な話をその天然さで中断された事に神経切れそうになったが、ぐっと押さえた

「今日山本がホームラン打ったんですよ」
「へぇ…そう」
「こう勢い良く打って、かっこよかったなぁ…」

恍惚とした表情で山本のいるチームを眺めながら語る
が、違う男の話を喜びながら話されて、落ち着いて話せるほど雲雀も神経太くは無い

「ねぇ」
「………?」
「じゃあ…」
「?」
「…………………はっ」

ツナが雲雀を見上げるといった体勢に、少し誘惑にぐらついたが、なんとか理性で正気に戻した

「じゃあ、僕がホームランとやらを打ったら喜んでくれるのかい?」
「雲雀さんが?そりゃあ、もちろん喜ぶけど…って雲雀さんっ?!

雲雀はツナの言葉を最後まで聞く前に、ベンチを立ち上がりすたすたと歩いて行ってしまった

「ちょっ…どこに…」


雲雀はチームのメンバーと話していた山本の肩を掴んだ

「ねぇ」
「…?あぁ、雲雀か。どうしたんだ?」

久しく珍しい声に驚きながら、笑顔で振り返った

「僕と野球で勝負しなよ」
「ん?なんでだ?」
「ごちゃごちゃ言ってないで僕と勝負しなよ。それとも逃げるのかい?」

挑発的に言い、肩を掴む力を強める
山本はその意気込みのいつもと違った気迫を感じ取った

「あははっ!逃げねーって!んじゃ、まず雲雀はストレッチしてから…」
「そんなのはいいから、早く始めよう」
「そんな急ぐなって、怪我の元だぜ?な?」
「…」

静止を掛ける山本の声を無視し、近くのバットを拾いあげてベースに立った

「…仕方ねーな。雲雀ーっ!怪我しても知らねーからな!」
「…」

山本はため息をつきながらも、渋々マウンドに立つ

その様子を見ていたツナは、やっと意味を理解した

「え?まさかっ…」





next

*あとがき*
とりあえずnextで
あと1200文字で終らせられる勇気は無い。うん
雲雀、アタックがことごとく空振り。そんな話のつもりなんだよ
次回どうしよ…雲雀さんにホームラン打たせるか…空振りか…
でも雲雀さんは山本の次に素早いから打ちそうだしなぁ…
むー…



2009/4/24
堕天使エレナ


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堕天使エレナ
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女性
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学生
趣味:
絵描き 執筆 読書 ゲーム 寝る 妄想 便せん作り
自己紹介:
うえのイラスト画像はいただきもの。
オンラインでは執筆を
オフラインではイラスト中心に活動中デス
ギャルゲー、音ゲー、RPG系、シュミレーションゲームが好き
格ゲーやアクションは苦手

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