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ビスケット通信

小説(とたまに絵)を書いてるブログです。 現在更新ジャンルは本館で公開した物の再UP中心。 戦国BASARAやお題など。

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助けてあげましょう。特別にね(光就)



ああ腹立たしい腹立たしい。
何が好きでこうも狭苦しい場所に居ねばなら
ぬのだ。

清く正しい毛利の衛兵が、鍛え上げた兵が、
たかが織田の遊女ごときにたぶらかされ出し
抜かれるなぞなんたる不始末、不祥事。

眼下にあったにも関わらず視野に捉えていな
んだ事は、取り返しのつかぬ失態。

それはひとまず棚に上げたとしても、織田の
考えには全く理解が出来ぬ。徳川や独眼竜の
ように、天下を取り安国とするため状勢統一
しようという考えならば少しは分かるような
気もするが、むやみに他国を潰す織田の素行
を見る限りあれはただの武力暴行としか思え
ない。

織田の放った手駒もかなりの荒武者だった。
この我が、全く行動を予測出来ぬ程に意外な
動きをする者で、向こう見ずの無鉄砲な者か
と思えば我が張り巡らした策を、いとも容易
く掻い潜り抜ていった強者。

配置された各部隊を、次々と壊滅させていく
様には心底寒気がしたものだ。

どんな屈強たる兵を引き連れた武将かと此方
から出向きその面を拝んでみれば、ただなら
ぬ異様さを放つ者が一人で斬りかかってくる
し部下は見当たらずと目を疑った。

そして気がつけばこうして狭苦しい牢にいる
という有り様。覚えているのは目前に迫った
不敵な笑みと峰打ちの痛みくらいか。
あれは思い出すだけで眉をしかめたくなる。

「毛利殿、長らくお待たせしてすみません」

先日戦場で見た時と同じ格好、得物を両手に
していた。側にいる家臣は脅えた表情で灯り
の蝋燭を手にしている。

「漸く我を殺しに来たか」

きつく睨み付けながら、そういえば此処に
来て初めてまともに口を開いたと気付く。

「いえ、それはまたいつかゆっくりと…
 今日はこれから宴があるので…素敵な宴が
 ね…ですので、貴方を特別に
 此処から出してあげましょう」

奴の持つ二本の鎌が、射し込む光のほとんど
ない暗闇で妖しげに煌めく。

「宴…?」

「えぇ、楽しい楽しい宴ですよ」

【宴】と聞けば、普通は酒を呑み交わす事を
意味する筈だが、この者が言った【宴】は、
些か悪意に満ちたような、それでいて高潮感
を含んでいて、どことなく何かを予感させる
ものだ。

それに何故【宴】だからと此処から出られる
のかが分からない。

命令された家臣が持っていた鉄格子の施錠を
開け、「さあどうぞ…」と出るように促され
る。一体何が目的なのか意図が不明で動いて
良いものか判断しかねる。

罠にしては奴の意識が我には無く見え、その
目には更なる別の目標物を捉えているように
見える。邪悪な、何かが。

そして大して何の束縛もなく、簡単に逃走が
出来る姿で渋々後ろを追い歩き始める。

無警戒なのか、または習知の上での事なのか
は分からないが、無防備に後ろ姿を敵に見せ
るなど武士の風上にもおけぬと内心で悪態を
つく。

そして地上へ近くと共に、嫌に外が騒がしい
と気付いた。

――何かが可笑しい。

「騒がしい…」

「ククク…ですから…『宴』ですよ…」

わずかに呟いた言葉に目敏く反応を返された
事が気に障るが、奴が先ほどから発している
宴という言葉が気にかかった。

尋ねて良いものかと暫し考える。とはいえ、
そう長く考えている訳ではなく、ものの数秒
の時間だ。我にとってはだいぶ長い時間考え
ていたといえる。

「宴とは――」


口を開いてから、【宴】が何かを知る。

何もかもが燃えていた。
暗い夜空が赤く染まり、火の粉が辺りにちら
ちらと舞っていた。

「―――綺麗でしょう?
 本能寺は実に美しく燃えるものですね…」

確か、織田軍が主領地としていた中に本能寺
という建造物があったのを脳内に広げた地図
から思い出す。

だが奴は――明智光秀は、あの魔王と名高い
織田信長が一目置く家臣の一人の筈だ。それ
が主君に牙を見せている。だとすればこれは
立派な反乱ではないか。

「何故、世界の全てを手にしてしまえる程の
 器量を持った織田に刃向かう」

知らぬうちに口から紡がれていた言葉に、
明智はこの状況が実に楽しいと言わんばかり
の笑みを口元に携えて答える。

「簡単ですよ…私はあの方と戦ってみたい、
 倒してみたい、通った血を見、肉を裂いて
 みたいという…その欲望のみで、信長公に
 仕えていたまで」
「それに私は天下などに興味はありません」

初めから忠誠など無く、ただの標的としか
見ていなかったという事か。己の欲望のみの
為に仕えその首を断つ機会を始終伺っていた
とは、今の乱世ありふれた話とはいえこの者
だと尚更恐ろしい気がする。

ただでさえ、邪気に加えて更にはただならぬ
死臭を漂わせているのだから。それをまとも
に受けていた織田も相当の者といえようが。

「少し、信長公と遊んできます」

燃え盛る本能寺。
奴は其処に向かう、気狂いの狂人。

「どうです、貴方もご一緒しませんか?」

愉しげに振り返った。
浮かべる笑みは、さながら狩りをする悪魔と
云えようか死神と例えようか。

「下らぬ事に巻き込むな」

「そうですよね…まぁ…逃げるも国に帰るも
 何処へなりと行きなさい。

 宴が終わり、もし私の気が向いたその時は
 探して逢いに行きますので…
 …貴方をゆっくりと味わう為に、ね…」

細められた眼に、奮えと殺意が混じる。

――なればその時は、この我に一日といえど
屈辱を味会わせた罪を晴らしてくれよう。

そう殺気を込めて言い返せば、愉しげに笑み
を見せて、奴は最上の宴へと向かった。

踵を翻す。
安芸に戻る為に。安芸と、毛利を守る為に。
明智を迎え撃つ為に。

その時が来るまでこの命、何人たりと奪わせ
ぬと腹に決めた事は、生涯忘れなかった。


―――――――――――――――終

2010/2/15
『助けてあげましょう。特別にね』

お題配布元… 月と戯れる猫 様

――――――――――後記―――

本能寺の変ですね、えぇ。一度こういうネタ
を書いてみたいなと思っていたんですよ。
因みに執筆中BGMは「眠れ緋の華」です。
毛利は死ぬまで明智を待っていたんですよ…
きっと。まぁ結局病気には勝てなかったそう
ですからね…神を恨んだでしょうねぇ…
というか、お題がいかせてない(^人^;)
捕らえた毛利を逃がす話が書きたかったのに
いつの間にか本能寺の変の話が主体になって
いたという不思議(苦笑)
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堕天使エレナ
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職業:
学生
趣味:
絵描き 執筆 読書 ゲーム 寝る 妄想 便せん作り
自己紹介:
うえのイラスト画像はいただきもの。
オンラインでは執筆を
オフラインではイラスト中心に活動中デス
ギャルゲー、音ゲー、RPG系、シュミレーションゲームが好き
格ゲーやアクションは苦手

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