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ビスケット通信

小説(とたまに絵)を書いてるブログです。 現在更新ジャンルは本館で公開した物の再UP中心。 戦国BASARAやお題など。

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闇に囚われた光(?→元就/シリアス)


※誰かに監禁されてますが別に痛くない。
相手はご自由に想像して下さいな……









トントントン


扉を叩く音で、意識を覚醒させられる。
今が朝方なのか、昼間なのか、夜なのか辺り
は真っ暗で全く判らないのだが、外から聴こ
えてくる鈴虫の音色からして、今は夜間なの
だろう。


トントントン


「…何用」

もう一度、扉を叩く音。
今度は返事を返した。

ここに来た初め無視して返事を返さなかった
頃もあったが、返事を返さねば食事は愚か水
すらも与えられぬのかと理解して、それ以来
最低でも二度目には返事を返すようになって
いる。

されど扉が開く事はなく、扉の向こに居る者
から返答が帰ってくる事も無い。何をする訳
でもなく、其所に立っているだけだ。

時より、食事を持って来る時以外にも誰かは
来る。おおよそ見回り、見張りだろう。

嗚呼、そういえば最近日輪を拝んでいない。
いい加減黴が生えそうだ。

「今日は、晴れていたか」

トン

扉が一度叩かれる。
今日は晴れていたようだ。
良い日輪日和だったらしい。

…ここで得た事といえば、食事の時は五回、
見回りの時は三回、此方が質問した事に対し
てそうである場合は一回、そうではない時は
二回、帰る時は四回、相手は扉を叩くという
事と、扉の向こうの者は殺気を持たないこと
からして我を殺す気は無いという事。

何故殺されぬのか、問おうにも決して答えが
返ってくることはないため聞くのは無駄だと
諦めた。

ならば、我に何らかの利用価値があるか?
当主とはいえただの毛利家の一駒に過ぎぬ。
自分の価値、など考えても何も利は出ない。

例え外の者に相手に利があるよう交渉を持ち
掛けようにも相手が我に何を求めているのか
分からなければ、策の打ちようもない。




ここに入れられてから幾日、幾月経ったのか
もう既に数えるのは辞めている。知りたいな
どとも思わなくなった。
それだけ

生い立ちは何だったか、思い出せぬ。
毛利が戦に負けた?就寝中の奇襲?
それとも家臣の反旗か?

忘れた。
思い出したくもない。


「貴様は竹中か?」

答は、無い。

「貴様は長曽我部か?」

答は、無い。

「貴様は松永か?」

答は無い。

「貴様は、明智か?」

やはり、答は無い。

「貴様は、」

トントントントン


質問しようとして、まるでそれを遮るかのよ
うに四回、扉を叩く音が聴こえた。小さく舌
打ちを返せば、相手が薄く笑ったような気が
し、怒りを越えて肩の力が抜ける。

外界との接触が絶たれた。
我はまた一人だ。

壁に寄り掛かり、毛布を手繰りに寄せた。

寒い。季節がもう冬に近いのだろうか。だと
したら凍死するやもしれぬ。別に、それでも
構わない。何だって良い。この下らぬ日々に
終演を迎えられるのならば。



終わり
―――――――――
本館にUPしたもの。
相手は風魔か、久秀か、光秀なのか半兵衛か…妄想は無限。
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09゛ハロウィンSS2(光就/甘)







目を覚ませば、夕闇に包まれている。
座ったまま寝ていたようだ。

温かく、て…
はて…今は10月の終わり、しかも外となれ
ば寒いような気がするのだが…

別に気にする事でもあるまいが、あまりこの
ような場所で寝ているのもいかぬ。

身を起こそうと身動ぎをしようとすれば、
自分に見ようない上着が掛けられいて、隣に
感覚があるのに気付く。

首を捻って視れば、己の肩に凭れて眠ってお
る者は、宵闇のような黒服を来た光秀。

足元で不穏な輝きを放つ、大鎌に目に入る。
黒服に大鎌とくれば死神と予想がついた。

このような大鎌のレプリカ、一体何処から
入手したのだ…

寧ろ…この大鎌は本物のような感じがするの
は気のせいなのだろうか。
否、本物など未だ見たこともないが。

それよりも、何故これが此処に居る。

何故我に上着を掛け、待っているつもりがい
つしか自身まで眠ってしまう程に、待ってい
たのだ…

まさか、光秀のような者がハロウィンなどと
いう子供臭い行事ごときで、他の輩のように
騒ぐような性格ではあらぬはずだが、死神の
ような仮装をしておるという事はやはりハロ
ウィンに参加したいという事なのか。
全くもって理解出来ぬ。

「ぅ、んん…あぁ…元就公…
 起きましたか……」

寝惚け眼で見上げられる。
寝冷えでもしたのか、発色の悪い肌が寒さで
更に白く見えて、思わず上着を掛け返す。

「上着、返すぞ」

…別に良心ではない。ただ、冷えて風邪でも
引かれたら後で看病しろだの言われるのが
面倒だからだ。

ほくほくと暖かそうな表情を浮かべている。
こちらまで暖かいような気になるのは、なん
ともよく解らぬ。

「あの…Trick or Treatです」

大鎌を手に取り何かと思えば、ハロウィン
恒例の言葉が聞こえ。あまりにも普段の様子
からは似合わぬゆえ、笑ってしまいそうだ。

この光秀だけに、普段はやらぬであろう悪戯
をすると考えると恐ろしい。
だが今は何もくれてやるものは無い。

「今は何も無い」

「おや…では……悪戯をしなければねぇ…」

どこか目付きが鋭い気がするのは、我の目の
錯覚であると信じたい。

「…このような下等行事になど付き合えぬ
 我は帰るぞ」

「え…」

家に隠り、誰にも会わねばそれでよい。
いや、これ以上誰か来る宛は今のところない
のだが。

帰路へと足を向ければ、付いてくる気配。
道中の視線などは、気にならぬのかこれは…

そう何分とも経たぬ内、家についてしまう。
確か、戸棚にまだ何かあったはずだ。

ドアノブを捻れば開いていて。
ああ、そういえば昼間竹中と長曽我部を残し
て逃げてきたのだった。

パタパタとスリッパの音。
よもやとは思うが…

「あ、お帰りー」

出迎えたのは竹中。
エプロンはもしや態々自家から持ってきたの
だろうか。

いや、長曽我部はどうした?
まさか竹中に負け追い払われたか。
…それはそれで手間が省けた。

後ろの光秀に痛い視線を向けられているが、
とにかくこの竹中を追い払わねば。

「帰れ」

「嫌だよ。それよりもさ…
 何で、それがいるのかな?」

「それ…とは…私の事ですか?」

「ねぇ何で?元就君」

つじつまの合わない下手な嘘をついても、
気付くか気にしないかどちらか。
となれば上手く芝居を打つ必要がある。

だがそれには光秀の強力が必要となり、我が
求める言葉を選ぶかわからぬが、ひとつ、
懸けてみる他無い。

いつからか隣に居た光秀に視線を一瞬向けて
から、意を決め竹中に見せつけるようにして
腕を組む。
ああ…寒気がする…全く…

「今宵こやつと夜を共にするからだ」

「え……ええ、そうです。
 今夜はじっくり元就公を味わうんですよ」

僅か動揺に狼狽えた様子を見せたが、すぐに
意図を察知したのか会話を合わせた。

期待通り、竹中はショックのあまり固まって
いる。

すぐに竹中を玄関から外へと押し出し、靴も
外に出してドアを閉めた。我に返った竹中が
自分も一緒になどと言いそうだと頭を過って
しまったゆえ。

鍵を閉め、チェーンロックもかける。
これで危機は去った。

が、背後から抱きすくめられる感覚に、嫌な
予感。

「では…早速味わうとしましょうかねぇ…」

「本気にするなっ!」

回避する暇もなく、あれよあれよという間に
抱き抱えられる。不覚。

ああ…やはり今朝真田に誘われた時共に向か
えば良かったか。それとも公園になど行かず
図書館にでも行けば良かったのだろうか…

今さら戸棚にあんみつの缶詰めがあったのを
思い出したが、今この光秀に何を申そうと
無駄なのであろう。

我は一体何をどう計り間違えたのだろうか…



終わり
―――――――――――――
2009/10/31に本館UP

09ハロウィンSS1(元就総受け?/ギャグ)





「とりっくおあとりーとっ!」

呼び出し音に起こされ、徹夜明けで不機嫌に
なりながらドアを開ければ、真田幸村が虎の
着ぐるみを着て玄関前に立っていた。

手を差し出し、キラキラと目を輝かせ自分を
見ている。

今日は確か10月31日…
ああ、ハロウィンだったか…

「お菓子をくれないと、
 いたずらするでござるよっ♪」

真田の悪戯など底が知れているが、子供の戯
れにはき合ってやらねば後が面倒だ、一応、
付き合ってやらねばならぬ。

「…少し待っておれ」

玄関先へと招き入れてから、台所へと歩いて
いき戸棚を開ければ、先日仕事先から頂いた
和菓子を見つけ、軽く飾る様に包み玄関へと
戻る。

真田は鼻歌を歌いながら、ちゃんと大人しく
していたようだ。

「ほれ、菓子だ」

「ありがとうでござるっ!」

にこにこと笑顔で受けとる真田。
無邪気とは羨ましい。

次いで、交換するかのように紙袋を渡され、
意味が分からない。ハロウィンとは、何かを
交換する行事だったのだろうか…

中身を覗けば、なにやら布が入っているのは
見えるが、何故衣装を渡される。

まさか真田と共に菓子を貰いに回れという奴
なのか。

「一緒に回りませぬか?」

「……馬鹿馬鹿しい」

紙袋を突き返して、外へと追い出す。
ドアを閉めてからもしばらくは説得していた
らしいが、全て無視。

ハロウィンなどというくだらない興味には、
興味が無い。


…だが、ここで共に行っておけば良かったと
後々後悔する事となった。






昼食後、本でも読もうかと椅子から立った時
呼び出し音が鳴り響いた。

今度は誰なのだ…
玄関まで向かい、覗き窓を覗けば、怪しげな
獣耳を付けた者が目に入る。

暫く観察していれば、獣耳を付けた者は我に
気づいているのか外し覗き窓に近寄る。

その顔を見て、目頭がひきつった。

「開けてよ」

…竹中か…開けたくない…

確実にあれはハロウィンの仮装だろう。
つまりは、菓子を貰いに来たという事で。
だが竹中は甘い物は嫌いだ。

ならば悪戯目的だろう。
以前から鬱陶しい程付きまとっていたが、
こういった行事にまで押し掛けるなど呆れて
文句も言えぬ。

「何用だ…」

「トリックオアトリートだよ、元就君」

…聞かなくとも用件は分かっていたが。
とにかくこのストーカーを追い払わねば。

ドアに鎖をかけてから、先ほどと同じように
台所へと向かい戸棚を開ける。

幸いな事にチョコレートがあった。これなら
竹中も食せるゆえ、大丈夫だろう。

重い足取りを無理矢理にでも動かして玄関へ
と向かい、ドアチェーンを外す。
軽く戦闘体勢を整えてから、ドアを開けた。

「元就くんんわわわぁ…っ!」

第一防衛、不意の抱きつきを足掛けで回避。
第二防衛、背中に足を置けばこれで竹中の
撃退は完了。

何回がぐいぐいと踏みつけて、呻くのを聞き
取ったらば足を退ける。

「ふふっ…元就君ったら…
 相変わらずスキンシップが激しいんだね」

相変わらずではなく、この先一生貴様に関わ
る気は無い。

「ほれ、チョコでもくれてやるわ。
 とっとと帰れ犬」

投げ付ければ、うまい具合にキャッチする。
こういう時くらい落とせば良いのに。

「犬じゃなくてこれは狼なんだよっ?!」

「うるさい竹中犬」

「もとなりぃーっ!」

…また、煩いのが来たか。

何の扮装…仮装をしているかと見れば、キャ
プテンパッドに所々穴やすり傷のついた紳士
服とは、いったい何の仮装だ。

「トリックオアトリート!
 キャプ●ンハーロ●クのお出ましだぜぇ」

キャ●テンハーロ●ク?
どこかにそのような航海士だっか海賊だった
かの名を聴いた事があるようなないような。

早速ハロウィンの決まり文句を言うのか。

しかし今日はやたらハロウィンを祝いたがる
者が、多いのだな…その思考が理解出来ぬ。

「貴様にくれてやる菓子は無い」

「んじゃあ悪戯をv」

「ちょっとちょかべ君だけ狡いって!」

…なにやら無駄な争いを始めた。

その二人の足元をすり抜ける。
ふん…計算通り、気付かぬわ。
阿呆な奴等め。

さて…
逃げてきたは良いが、何処に向かえば良いの
だろうか…
別にどこかに用がある訳でもあるまい…

公園…にでも、森林浴をしに行くか。



公園とはいえ、ただの広場に近い。
特に遊具がある訳でも無い。

ただ座る場所があり、木々に囲まれていると
いうだけで。
こういう質素なところが気に入りだ。

「あ、元就じゃん」

「…慶次?まさか貴様もハロウィンなどと
 騒ぐ訳じゃあるまいな…」

「いんや?俺はハロウィンより、
 これからデートに行くんだよー」

相変わらず恋だの愛だのと騒いでおるのか…
これはこれで良いのか悪いのか…

次いで、飴を貰ったのは何故だ。
既に慶次が去った今では分かるまい。



今日も…日輪が神々しい…

このような日にはゆっくりと、

「幸村ぁーっ!!」

…ゆっくりと…

「Ah…元就か。俺のmy haneyの幸村
 見かけなかったかぁ?」

「見かけなんだ」

せっかくの時間を邪魔をしないで欲しい。
たかが、恋人だか好いている者の行く先など
共に探してやる気は毛頭ない。

おおよそ、悪戯目的で真田を探しているのだ
ろうが、今朝仮装をしていた幸村から推測し
て、逆に悪戯に遭うのが関の山だろう。

警告などせぬが。

「…今朝我の家に来たが、その後は知らぬ」

「Han…Thank you!」

何が手掛かりになったか分からぬが、何か
ヒントになったようだ。

つまらぬ…全く…

ふわ…あぁ…そういえば、あまり寝てないの
だったな。このような場所で寝るなど考えた
くもないのだが…
睡魔には、負けてしまうものだ…




next

HAPPY NEW YEAR!



新年あけましておめでとうございますっ
皆様今年もうちのサイトを宜しく願います!

とまぁ…堅苦しい挨拶はこの辺で終わりに…

ちゃおっス
今年初めての更新ですね!

さて、
今年の目標は!!


  ┌-┐_┌-┐
  ┃’ 川 ‘┃ 
 (〓`ω´〓){虎だぞ!
┌―∪―――U―――――――――┐
■アンソロジーを成功させる!  ■
■お題100題を達成する!   ■
■職に就く!          ■
■パソコン一式買う!      ■
■あの御方に逢いに行く…!   ■
■イベントに積極的に参加する! ■
■妄想する!光秀を愛す!←   ■
■今年も一日一善!       ■
■バサラ愛!          ■
└―――――――――――――――┘

…とりあえず控えめにこんな感じで…
頑張りますよっ

でも本当は…
オクラの聖地に行きたいとか
コスプレしたいとか
(勿論就様の←髪の長さ的に無理ですが)
これらはあまり叶う望み無いんで
希望にしておきますけど。


兎に角、今年も

家族友人、ふ…迷惑かける(←宣言したッ)
常連様、生暖かい目でこれからも気長にこのサイトを宜しくお願いします…
相互サイト様、今年も仲良くしてください☆新年の記念ついでに相互記念で一個、フリーリクエスト受けますよっ!(←マジです)
文通相手様、音信不通ですが心を広く仲良くしていただきたいです…っ
zero君、今年も同じ穴のムジナ精神で。
あわる様、お互い創作頑張りましょう!
アンソロジー参加者様【Let's 創作応援中】
隼人様、去年よりも仲良くしたいです☆
亮さん、今年は是非お会いしましょう…ね


ではでは…今年も宜しく願いします~









ちょっとお遊び…

|/
○―  ┌-┐_┌-┐
|\  ┃’ ∴ ‘┃ 
  <(〓`ω´〓){日輪よ!
―――――――∨―――――――┐
― ― ― ― ― ― ― ―┤
―――――――――――――――┘

下らねぇ…(苦笑)



しろいともだち(光就/妖怪パロ/ほのぼのα)





 しんと静まり返った地に、曇りがかった空
から、ひらひらと舞い降りてくる白。

「綺麗ですねぇ…」

雪が降っている。
それは積もりに積もって、辺りを真っ白にし
てゆく。屋根の上も木の枝も。

例えるならば白銀世界。空と地と、見分けが
つかないのではないのかと思うほどに、雪は
綺麗に降り積もり、世界の全てが白に包まれ
ていて、時の流れすら忘れさせる。

この雪景色をもう幾度見たことか。
何百年とある記憶の中から、それを思い出す
のも数えるのも面倒なので普段深くは考えた
りはしないが、時より気になったりする。

だがいざ気になり考えるも、いったい自分は
いつからこの地に居座っていたのかその変の
記憶が曖昧な為、結局思い出せず仕舞いに
終わるのだだが。

 夜間の寒さに霜柱の出来ている地面をさく
さくと踏み鳴らしながら、山中の道を進む。
この真冬の時期、まして山中となれば動物は
おろか、人影すら見つからない。

空腹を訴える腹に溜息を吐く。
普通ならば妖怪は、妖気が存在に関わる危険
値にまで下がらなければ生気を得ずとも生き
ていられるので、別段食事の必要性は無きに
等しいのだが、半妖な自分はいかんせん変な
部分だけ人間らしさを受け継いでいるらしく
人並みに腹は空いてしまう。

空腹を紛らわす為に動物の、元来の姿である
白蛇の姿に成り冬眠でもしてしまおうか。
それとも山を降りて、村などから手短に人間
でも拐って食べるか。

別に生気を得るのが目的でなければ生き物を
捕まえなくとも良いのだが、いちいち手間の
かかる料理などをするは自分には面倒で好か
ない。かといって、山菜や木の実をそのまま
食べるというのは些か人として気が引ける。
それ故に、結局村人や野生動物などを捕らえ
食すのが一番手短で済むという結論だ。

早速狩りにでも行こうかと思っていた矢先、
ずっと先から風に乗って、僅かに生き物の
気配を感じた。

――珍しい

人間であろうとその他の動物だろうと、この
真冬の寒い日に、しかも雪の降る中易々と、
出歩く生き物がいるとは正直驚いた。

 空腹を満たそうと歩はその方向に向く。
久々の血肉に…食事にありつけるのだと思う
と、無意識で舌舐めずりをしてしまうほどに
まで気持ちが昂り、歩く足は速まりやがて
駆け足へと変わる。

 生きたまま、まだ温かな血の巡るその身を
引き裂き激痛に泣き狂う鳴き声を聴きながら
食べるか、はたまた絞め殺してからじっくり
と味わいながら食すのか―――どちらも実に
興奮出来るだろう。想像するだけでも恍惚と
してしまう程なのだから。

そういった、獲物をいたぶる楽しみがあるが
故に、食事は妖気を増幅させるのだと自分は
考えている。実際はその生き物の生命力を
吸収し妖気へと変換されているのだろうが、
それではあまり面白味が無いではないか。

面白味の為に時には人間を犯す事もある。
散々犯し喘がせ、達し飽きれば殺める。

とはいえそれは、殺意より性欲が上回った時
のみの話で、そう頻繁にあることではないの
だし、気分が良ければ息の根を止める程度で
終わり、機嫌が悪ければ切りつけては殴り
叩きつけて気が済むまでなぶり殺してから
食す。つまり、捕食に至るまでの全てはその
時の気分によって左右されるのだ。


「…この辺りですかね」

 狭い獣道の草木を掻き分けて、辿り着いた
先には大きな桜の木が一本。見上げても先端
が全く見えない程に高く成長したこの木は、
既に軽く百年以上は経っているのだろうと、
古大木の木面を触りながら考えた。

見回しても何もいないため気のせいだったか
と諦めて帰ろうと踵を翻した瞬間、何かが
頭上に落ちてきて、直撃した。

驚いた拍子に尻餅をついてしまった足元に、
真ん丸い小さな白い塊が落ちている。雪だろ
うかと一瞬思ったが、よく見ればそれは呼吸
をしているのか体が上下しているのに気がつ
き、それが動物なのだと漸く判断出来た。

こんなに小さければ腹の足しにはあまりなら
ないだろうなどと考えながら、暫く観察して
いれば、真ん丸な生き物はもぞもぞと動き頭
をこちらに向けた。

「……」

まるで生き物は、怪訝そうに眼を細めてこち
らを見上げれば、ふるふると体を大きく震わ
せて体にまとわりついた雪を振り落とす。

それでも体毛は雪のように白い。
イタチかオコジョか何かなのかと思うもそれ
にしては大分耳が大きいような気がする。

「貴方、誰ですか?」

「……」

答える筈の無い質問に生き物の耳がぴくりと
動いたが、さも聴こえていないといった具合
にそっぽを向いて欠伸をする。

普通なら最初にこちらの存在を目視した時点
で逃げているだろうし、ましてや声を出せば
驚き逃げるに違いない。
人間に飼われていたならば別だが。

撫でようと手を伸ばせば、尻尾で軽やかに
振り払われる。その仕草で、根元の膨らんだ
尻尾がニ本ある事に気が付いた。

「おや…貴方は妖狐だったのですか」

妖狐は瞳を見開いて驚いた様子を見せた。
とはいっても、小さな目なのでほんの僅かに
しか変わってはいないのだが。

「…貴様、何者」

口から紡がれたのは、小動物らしい可愛らし
さのある見かけからは全く想像の出来ない、
低い人間の言葉だったので、今度はこちらが
驚かせられる。

狐は妖怪の中でも賢い方だと噂には聞いてい
たが、それでもたった百歳で――妖狐は百年
に一本尻尾が増えるので百歳だと判った――
人間の言葉が喋れるようになるとは知らず、
感心の念すら湧いてくる。

それに白狐とはあまり見たことも聞いたこと
も無く珍しいと思ったが、自身も元来が白い
姿な為に、あえて何も言わないでおいた。

「貴方と同じ、妖怪ですよ」

同じ人ではない生き物なのだと教えれば安心
するかと思いきや、毛を逆立てて警戒の気を
発せられた。何故だろうかと理由が判らずに
どうも出来ず苦笑いを浮かべた。

「貴様からは人間の匂いがする」

「半妖…半分妖怪で半分人間ですから…」

確か遠い記憶では、母方が人間で父方が妖怪
だったと聞いている。いったいどういう馴れ
初めでそうなったのかは知らないし、知りた
いとも思わない。

 寒いのか、妖狐の彼は警戒をしつつ、体を
丸めた。

自分は元来が低体温動物だからなのかそれと
もただ単に寒さに強い体なのかは定かではな
いが、つまり寒さには強いので気付かなかっ
たのだがいつの間にか先程まで降っていた雪
が吹雪へと変わりつつあった。

「住み処は何処です?送りますよ」

「無い」

即答で返ってきた返事に数秒思考が停止した
気がする。この寒い冬住み処も無しに生きる
など自殺行為に近いと思ったが彼は妖怪だっ
たのだと思いだし考えを改める。

「では私の住み処に…」

「態態食われにいく馬鹿が何処にいる」

「いえ、貴方のような方を食べても
 腹の足しになりませんから」

「…ふん」

細い四足で立ち上がり、自分に向かって歩ん
でくれば横を通り過ぎていく。少し歩いたと
こで振り返り、

「案内せよ」

そんなひねくれた小さな妖狐の彼を、少し
ばかり愛しく思った。



2009/12/14に本館UP

――――――後書き――――――

まだ元就は若いから人間になれないのです。
という、裏設定(笑)
妖怪パロ好きなんです!

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HN:
堕天使エレナ
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性別:
女性
職業:
学生
趣味:
絵描き 執筆 読書 ゲーム 寝る 妄想 便せん作り
自己紹介:
うえのイラスト画像はいただきもの。
オンラインでは執筆を
オフラインではイラスト中心に活動中デス
ギャルゲー、音ゲー、RPG系、シュミレーションゲームが好き
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