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ビスケット通信

小説(とたまに絵)を書いてるブログです。 現在更新ジャンルは本館で公開した物の再UP中心。 戦国BASARAやお題など。

カテゴリー「戦国バサラ」の記事一覧

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09ハロウィンSS1(元就総受け?/ギャグ)





「とりっくおあとりーとっ!」

呼び出し音に起こされ、徹夜明けで不機嫌に
なりながらドアを開ければ、真田幸村が虎の
着ぐるみを着て玄関前に立っていた。

手を差し出し、キラキラと目を輝かせ自分を
見ている。

今日は確か10月31日…
ああ、ハロウィンだったか…

「お菓子をくれないと、
 いたずらするでござるよっ♪」

真田の悪戯など底が知れているが、子供の戯
れにはき合ってやらねば後が面倒だ、一応、
付き合ってやらねばならぬ。

「…少し待っておれ」

玄関先へと招き入れてから、台所へと歩いて
いき戸棚を開ければ、先日仕事先から頂いた
和菓子を見つけ、軽く飾る様に包み玄関へと
戻る。

真田は鼻歌を歌いながら、ちゃんと大人しく
していたようだ。

「ほれ、菓子だ」

「ありがとうでござるっ!」

にこにこと笑顔で受けとる真田。
無邪気とは羨ましい。

次いで、交換するかのように紙袋を渡され、
意味が分からない。ハロウィンとは、何かを
交換する行事だったのだろうか…

中身を覗けば、なにやら布が入っているのは
見えるが、何故衣装を渡される。

まさか真田と共に菓子を貰いに回れという奴
なのか。

「一緒に回りませぬか?」

「……馬鹿馬鹿しい」

紙袋を突き返して、外へと追い出す。
ドアを閉めてからもしばらくは説得していた
らしいが、全て無視。

ハロウィンなどというくだらない興味には、
興味が無い。


…だが、ここで共に行っておけば良かったと
後々後悔する事となった。






昼食後、本でも読もうかと椅子から立った時
呼び出し音が鳴り響いた。

今度は誰なのだ…
玄関まで向かい、覗き窓を覗けば、怪しげな
獣耳を付けた者が目に入る。

暫く観察していれば、獣耳を付けた者は我に
気づいているのか外し覗き窓に近寄る。

その顔を見て、目頭がひきつった。

「開けてよ」

…竹中か…開けたくない…

確実にあれはハロウィンの仮装だろう。
つまりは、菓子を貰いに来たという事で。
だが竹中は甘い物は嫌いだ。

ならば悪戯目的だろう。
以前から鬱陶しい程付きまとっていたが、
こういった行事にまで押し掛けるなど呆れて
文句も言えぬ。

「何用だ…」

「トリックオアトリートだよ、元就君」

…聞かなくとも用件は分かっていたが。
とにかくこのストーカーを追い払わねば。

ドアに鎖をかけてから、先ほどと同じように
台所へと向かい戸棚を開ける。

幸いな事にチョコレートがあった。これなら
竹中も食せるゆえ、大丈夫だろう。

重い足取りを無理矢理にでも動かして玄関へ
と向かい、ドアチェーンを外す。
軽く戦闘体勢を整えてから、ドアを開けた。

「元就くんんわわわぁ…っ!」

第一防衛、不意の抱きつきを足掛けで回避。
第二防衛、背中に足を置けばこれで竹中の
撃退は完了。

何回がぐいぐいと踏みつけて、呻くのを聞き
取ったらば足を退ける。

「ふふっ…元就君ったら…
 相変わらずスキンシップが激しいんだね」

相変わらずではなく、この先一生貴様に関わ
る気は無い。

「ほれ、チョコでもくれてやるわ。
 とっとと帰れ犬」

投げ付ければ、うまい具合にキャッチする。
こういう時くらい落とせば良いのに。

「犬じゃなくてこれは狼なんだよっ?!」

「うるさい竹中犬」

「もとなりぃーっ!」

…また、煩いのが来たか。

何の扮装…仮装をしているかと見れば、キャ
プテンパッドに所々穴やすり傷のついた紳士
服とは、いったい何の仮装だ。

「トリックオアトリート!
 キャプ●ンハーロ●クのお出ましだぜぇ」

キャ●テンハーロ●ク?
どこかにそのような航海士だっか海賊だった
かの名を聴いた事があるようなないような。

早速ハロウィンの決まり文句を言うのか。

しかし今日はやたらハロウィンを祝いたがる
者が、多いのだな…その思考が理解出来ぬ。

「貴様にくれてやる菓子は無い」

「んじゃあ悪戯をv」

「ちょっとちょかべ君だけ狡いって!」

…なにやら無駄な争いを始めた。

その二人の足元をすり抜ける。
ふん…計算通り、気付かぬわ。
阿呆な奴等め。

さて…
逃げてきたは良いが、何処に向かえば良いの
だろうか…
別にどこかに用がある訳でもあるまい…

公園…にでも、森林浴をしに行くか。



公園とはいえ、ただの広場に近い。
特に遊具がある訳でも無い。

ただ座る場所があり、木々に囲まれていると
いうだけで。
こういう質素なところが気に入りだ。

「あ、元就じゃん」

「…慶次?まさか貴様もハロウィンなどと
 騒ぐ訳じゃあるまいな…」

「いんや?俺はハロウィンより、
 これからデートに行くんだよー」

相変わらず恋だの愛だのと騒いでおるのか…
これはこれで良いのか悪いのか…

次いで、飴を貰ったのは何故だ。
既に慶次が去った今では分かるまい。



今日も…日輪が神々しい…

このような日にはゆっくりと、

「幸村ぁーっ!!」

…ゆっくりと…

「Ah…元就か。俺のmy haneyの幸村
 見かけなかったかぁ?」

「見かけなんだ」

せっかくの時間を邪魔をしないで欲しい。
たかが、恋人だか好いている者の行く先など
共に探してやる気は毛頭ない。

おおよそ、悪戯目的で真田を探しているのだ
ろうが、今朝仮装をしていた幸村から推測し
て、逆に悪戯に遭うのが関の山だろう。

警告などせぬが。

「…今朝我の家に来たが、その後は知らぬ」

「Han…Thank you!」

何が手掛かりになったか分からぬが、何か
ヒントになったようだ。

つまらぬ…全く…

ふわ…あぁ…そういえば、あまり寝てないの
だったな。このような場所で寝るなど考えた
くもないのだが…
睡魔には、負けてしまうものだ…




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しろいともだち(光就/妖怪パロ/ほのぼのα)





 しんと静まり返った地に、曇りがかった空
から、ひらひらと舞い降りてくる白。

「綺麗ですねぇ…」

雪が降っている。
それは積もりに積もって、辺りを真っ白にし
てゆく。屋根の上も木の枝も。

例えるならば白銀世界。空と地と、見分けが
つかないのではないのかと思うほどに、雪は
綺麗に降り積もり、世界の全てが白に包まれ
ていて、時の流れすら忘れさせる。

この雪景色をもう幾度見たことか。
何百年とある記憶の中から、それを思い出す
のも数えるのも面倒なので普段深くは考えた
りはしないが、時より気になったりする。

だがいざ気になり考えるも、いったい自分は
いつからこの地に居座っていたのかその変の
記憶が曖昧な為、結局思い出せず仕舞いに
終わるのだだが。

 夜間の寒さに霜柱の出来ている地面をさく
さくと踏み鳴らしながら、山中の道を進む。
この真冬の時期、まして山中となれば動物は
おろか、人影すら見つからない。

空腹を訴える腹に溜息を吐く。
普通ならば妖怪は、妖気が存在に関わる危険
値にまで下がらなければ生気を得ずとも生き
ていられるので、別段食事の必要性は無きに
等しいのだが、半妖な自分はいかんせん変な
部分だけ人間らしさを受け継いでいるらしく
人並みに腹は空いてしまう。

空腹を紛らわす為に動物の、元来の姿である
白蛇の姿に成り冬眠でもしてしまおうか。
それとも山を降りて、村などから手短に人間
でも拐って食べるか。

別に生気を得るのが目的でなければ生き物を
捕まえなくとも良いのだが、いちいち手間の
かかる料理などをするは自分には面倒で好か
ない。かといって、山菜や木の実をそのまま
食べるというのは些か人として気が引ける。
それ故に、結局村人や野生動物などを捕らえ
食すのが一番手短で済むという結論だ。

早速狩りにでも行こうかと思っていた矢先、
ずっと先から風に乗って、僅かに生き物の
気配を感じた。

――珍しい

人間であろうとその他の動物だろうと、この
真冬の寒い日に、しかも雪の降る中易々と、
出歩く生き物がいるとは正直驚いた。

 空腹を満たそうと歩はその方向に向く。
久々の血肉に…食事にありつけるのだと思う
と、無意識で舌舐めずりをしてしまうほどに
まで気持ちが昂り、歩く足は速まりやがて
駆け足へと変わる。

 生きたまま、まだ温かな血の巡るその身を
引き裂き激痛に泣き狂う鳴き声を聴きながら
食べるか、はたまた絞め殺してからじっくり
と味わいながら食すのか―――どちらも実に
興奮出来るだろう。想像するだけでも恍惚と
してしまう程なのだから。

そういった、獲物をいたぶる楽しみがあるが
故に、食事は妖気を増幅させるのだと自分は
考えている。実際はその生き物の生命力を
吸収し妖気へと変換されているのだろうが、
それではあまり面白味が無いではないか。

面白味の為に時には人間を犯す事もある。
散々犯し喘がせ、達し飽きれば殺める。

とはいえそれは、殺意より性欲が上回った時
のみの話で、そう頻繁にあることではないの
だし、気分が良ければ息の根を止める程度で
終わり、機嫌が悪ければ切りつけては殴り
叩きつけて気が済むまでなぶり殺してから
食す。つまり、捕食に至るまでの全てはその
時の気分によって左右されるのだ。


「…この辺りですかね」

 狭い獣道の草木を掻き分けて、辿り着いた
先には大きな桜の木が一本。見上げても先端
が全く見えない程に高く成長したこの木は、
既に軽く百年以上は経っているのだろうと、
古大木の木面を触りながら考えた。

見回しても何もいないため気のせいだったか
と諦めて帰ろうと踵を翻した瞬間、何かが
頭上に落ちてきて、直撃した。

驚いた拍子に尻餅をついてしまった足元に、
真ん丸い小さな白い塊が落ちている。雪だろ
うかと一瞬思ったが、よく見ればそれは呼吸
をしているのか体が上下しているのに気がつ
き、それが動物なのだと漸く判断出来た。

こんなに小さければ腹の足しにはあまりなら
ないだろうなどと考えながら、暫く観察して
いれば、真ん丸な生き物はもぞもぞと動き頭
をこちらに向けた。

「……」

まるで生き物は、怪訝そうに眼を細めてこち
らを見上げれば、ふるふると体を大きく震わ
せて体にまとわりついた雪を振り落とす。

それでも体毛は雪のように白い。
イタチかオコジョか何かなのかと思うもそれ
にしては大分耳が大きいような気がする。

「貴方、誰ですか?」

「……」

答える筈の無い質問に生き物の耳がぴくりと
動いたが、さも聴こえていないといった具合
にそっぽを向いて欠伸をする。

普通なら最初にこちらの存在を目視した時点
で逃げているだろうし、ましてや声を出せば
驚き逃げるに違いない。
人間に飼われていたならば別だが。

撫でようと手を伸ばせば、尻尾で軽やかに
振り払われる。その仕草で、根元の膨らんだ
尻尾がニ本ある事に気が付いた。

「おや…貴方は妖狐だったのですか」

妖狐は瞳を見開いて驚いた様子を見せた。
とはいっても、小さな目なのでほんの僅かに
しか変わってはいないのだが。

「…貴様、何者」

口から紡がれたのは、小動物らしい可愛らし
さのある見かけからは全く想像の出来ない、
低い人間の言葉だったので、今度はこちらが
驚かせられる。

狐は妖怪の中でも賢い方だと噂には聞いてい
たが、それでもたった百歳で――妖狐は百年
に一本尻尾が増えるので百歳だと判った――
人間の言葉が喋れるようになるとは知らず、
感心の念すら湧いてくる。

それに白狐とはあまり見たことも聞いたこと
も無く珍しいと思ったが、自身も元来が白い
姿な為に、あえて何も言わないでおいた。

「貴方と同じ、妖怪ですよ」

同じ人ではない生き物なのだと教えれば安心
するかと思いきや、毛を逆立てて警戒の気を
発せられた。何故だろうかと理由が判らずに
どうも出来ず苦笑いを浮かべた。

「貴様からは人間の匂いがする」

「半妖…半分妖怪で半分人間ですから…」

確か遠い記憶では、母方が人間で父方が妖怪
だったと聞いている。いったいどういう馴れ
初めでそうなったのかは知らないし、知りた
いとも思わない。

 寒いのか、妖狐の彼は警戒をしつつ、体を
丸めた。

自分は元来が低体温動物だからなのかそれと
もただ単に寒さに強い体なのかは定かではな
いが、つまり寒さには強いので気付かなかっ
たのだがいつの間にか先程まで降っていた雪
が吹雪へと変わりつつあった。

「住み処は何処です?送りますよ」

「無い」

即答で返ってきた返事に数秒思考が停止した
気がする。この寒い冬住み処も無しに生きる
など自殺行為に近いと思ったが彼は妖怪だっ
たのだと思いだし考えを改める。

「では私の住み処に…」

「態態食われにいく馬鹿が何処にいる」

「いえ、貴方のような方を食べても
 腹の足しになりませんから」

「…ふん」

細い四足で立ち上がり、自分に向かって歩ん
でくれば横を通り過ぎていく。少し歩いたと
こで振り返り、

「案内せよ」

そんなひねくれた小さな妖狐の彼を、少し
ばかり愛しく思った。



2009/12/14に本館UP

――――――後書き――――――

まだ元就は若いから人間になれないのです。
という、裏設定(笑)
妖怪パロ好きなんです!

全部貴様が悪い(クリスマス話/現パロ/結局光就)




 LEDの青いライトで飾付けられた町並み
を横目に、クリスマスソングが彼方此方から
聴こえてくる商店街の中を歩く。
いくら消費電力が低いとはいえこんなにごて
ごてと飾り付けては意味が無いのではないか
と内心呟きながら、男女が腕を組み頬を染め
歩く姿が目の端々に入り嫌気する。

 生まれてこのかた、クリスマスやイブの日
に誰かと馬鹿のように騒いだり、恋人と幸せ
な聖夜を過ごそうなどと一度たりとも思った
事は無い。
寧ろ普段生活している時は宗教など全く興味
が無い癖にこういう日だけクリスマスを祝う
などという浮かれた考えが了解不能だ。故に
クリスマスなどという行事は、自分には全く
関係ないと切り捨てている。

 こんな日は家に籠って読書をするか、執筆
に勤しむのが一番なのだが、よりにもよって
クリスマス前に依頼原稿が立て込み執筆に追
われ、ろくに買い物すら出来ぬ状態だった。
それで渋々、こんなクリスマスに買い出しに
出ている現状。

「…魚か」

 【長曾我部魚屋】という、クリスマスのイ
ルミネーションに飾られた看板が目に入る。
わざわざクリスマスの為に電飾を買う金があ
れば店の改築でもやればよいのではと、以前
訊いたが父親の店を弄りたくはないと言って
いた。

 さて、明日の夕食は旬の鱈を使って湯豆腐
鍋にでもしようか。余れば残りは雑炊にでも
して翌日に持ち越そうか。

店先に広げられた小さな魚市場を品定めして
いれば先に来ていた客の接客が終わったらし
い店主、もとい長曾我部元親が腰にサンタの
絵が描かれた前掛けを身に付け現れる。

「お、元就ぃ!お前がイヴに買いもんなんて
 珍しいじゃねぇか」

「少し仕事が立て込んでな。それで渋々」

「おーおー、苦労してんだな」

因みに屈託の無い笑みを浮かべるこの男、
元親は中学からの友人だ。
一昨年までは毎年クリスマスにケーキを持ち
部屋に押し掛けて来ていたが去年からは来な
くなった。

恋人が出来たらしい。
右目に眼帯をした派手好きで英語混じりな…
確か名を伊達と言っていた気がするが、その
者と大事な夜を過ごすからと、金目鯛を持ち
挨拶に来た時の印象は鬱陶しかったという他
に記憶は無い。

「鱈を一匹貰いたい」

「おう、今日は鍋か?」

「そうだ」

…元親は妙な部分で勘が良いと思う。
青いビニール袋に詰めた鱈を受け取りながら
そう思っていれば、不意に後ろから肩を叩か
れ驚き振り返った。

「こんばんは、元就君」

黒のコートに群青色のニット帽とマフラー、
そして白い髪をふわふわと風に揺らして現れ
たのは、竹中半兵衛。

通っていた大学の同期生で、元親の他数少な
い親しい友人。
その半兵衛の後ろには、お揃いのマフラーを
首に巻いている豊臣秀吉が立っていた。

「お、半兵衛!久しぶりじゃねぇか!
 無事退院出来たんだな」

「うん、おかげさまでこの通り元気だよ」

大学を卒業してから半年後に病に倒れたと
聞いてたが、無事に回復したのならば良かっ
たと内心で安堵の笑みを浮かべる。

それを察してか知らずか竹中は微笑を浮かべ
ありがとうと礼を述べた。別段、礼を言われ
るような事はしていないと思うのだが、一応
社交辞令程度にはどういたしましてとだけ
言葉を返しておく。

「行くぞ半兵衛。
 夜は寒い、長く出てはお前の体に響く」

「うん、分かってるよ秀吉…
 じゃあ、そういう事だから。またね」

豊臣に肩を抱かれ人混みを避けて帰って行く
竹中の後ろ姿に、どこか安堵を憶えた。

「元就も早く帰んねぇと、体冷やすぜ。
 それに、従兄、待ってんだろ?」

「…多分」

「鱈はくれてやっから、早く帰れよ。
 俺からのクリスマスプレゼントだ」

微笑みと共にぽんと背中を押されて、そのま
まタイミング良く店に来た客の接客へと移っ
ていく。

――これも奴にとって一種の気遣いなのか。
そう考えると、いつの間にか元親の周りに人
が集まっていく理由が分かる気がした。

 全ての買い物が終われば、暗い空から雪が
降り始めていた。

 元親が述べた従兄とは、最近勝手に我が
住居に居座っている者で、確か父方の兄上の
子供と聞いている。

炊事洗濯は得意な様子だったので、家内仕事
を任せるという条件で家に住まわせている。

だが買い出しだけは、毎週末に実家から来る
使用人に任せていた。(因みに今年は使用人
の祖父の容態が良くないらしく休みを取った
との報を受けている)

従兄、彼は人付き合いが苦手で買い出しには
出れぬし、仕事につくなぞもっての他という
対人恐怖症…というより極度の人間嫌い。
母方の姉が亡くなった後、従兄の父親は早々
に家を出てしまい、渋々と親戚を点々とする
もその異質な性格により追い出され最終的に
我の元へたどり着いたと。

初めは次に渡す親戚の家が見つかり次第自分
も追い出そうと決め込んでいたのだが、馴れ
合っている内、不甲斐なくも他所へやるのが
惜しくなってしまい、結局そのまま従兄を
居座らせる結果に至っているのだ。



 ふと正面に目を凝らせば、交差点の外灯に
照らされる見覚えのある人影があった。
よもや…と思い駆け寄っていけばやはりとい
うか、手をコートのポケットに入れて電柱に
寄りかかっている従兄の姿。

「光秀」

声をかければ驚いたように此方を向いた。
寒さに赤くなった鼻先が長い間我を待ってい
た事を物語り、呆れと嬉しさと申し訳なさが
混ざり合い何ともいえない気持ちが生じる。

「あぁ…お帰りなさい、元就さん」

柔らかな笑顔を浮かべて直ぐに、くしゃみが
ひとつ。

こういう時は抱き締めて礼の言葉でも言うの
が良いのだろうが、生憎自分にはそんな気遣
うような事は言えぬし出来ぬ故、ただいまと
愛想無く返す事しか出来ない。

「荷物、持ちますよ」

「いらぬ」

「意地っ張りなんですから…
 ほら、こっちの袋持ちますからね」

結局奪うような感じで持っていたビニール袋
5つの内3つが従兄の手に渡る。
しかも重い方。

――実際、荷物が重く無かったと言えば嘘に
なる為、少し有難かった。
顔にも口にも出さぬが。

「雪ですから、ホワイトクリスマスですね」

帰路へと歩きながら、他愛ない話を交わす。

「そうだな」

ただそれだけなのに、何処となく特別感があ
るのは、今日がクリスマスだからなのか、
それとも雪の影響なのか。

「何でも、米国ではホワイトクリスマスだと
 恋が実るという迷信があるらしいですよ」

従兄が恋がどうと語るなぞ珍しいと思ったが
迷信と言っている時点で、迷信自体には興味
が無いのだろう。

「元就さん」

従兄が立ち止まった。
自ずとつられて自分も立ち止まる。

意味深長に微笑みながら
紅づいた頬が近付く、目前15センチ。

「私の恋も実りますかね…?」

上向く顔が熱いのはきっと寒さからくる冷え
逆上せのせい。

「我には知…」

言葉が紡がれなかったのは従兄のせいだ。
荷物を落としたのも呼吸が上手く出来ないの
も無駄に心拍数が上がるのも、光秀、




【全部貴様が悪い】

2009/12/24
――――――――――――――――


侵食(光就)

※元就語り。明智出てこないです。あと元就が明智に依存しちゃってます。




【侵食】






ああ…眠れぬ…


なかなかな寝付けずに寝返りを繰り返す。
寝床に入ってから既に一刻半は経っているのに、全く眠気が起きない。

仕方なく起き上がり、縁側へと出る。



今宵は満月か…


見上げ、夜空に佇む満月を見つける。
月といえば独眼竜を思い出す…などと思ったが、そんなことはどうでも良いと切り捨て、暫し満月に魅力されたかのように見つめ続けた。
暫くはそうしていたためか、思わず寒さでぶるりと身を震わせる。
夏とはいえど、やはり夜間は冷え込む。

仕方なく何か羽織る物をと思い、渋々自室へと向かう。
歩く床が冷たいと不快に感じ、眉間に皺を寄せた。



不意に何故か、明智の指の冷たさを思いだしてしまい――かといって、氷のように冷たい訳ではないのだが――その場に立ち止まる。
鬱陶しい程にこやかに笑う顔が浮かびかけたが、なんとか振り切り思考断ち切った。
自室に入れば羽織れそうな物を見つけ、肩に掛ける。





縁側に戻ろうかと立ち上がった時

『毛利殿…』

「っ…?!」


流れ込むように聞こえた声に驚いて、びくっと肩を震わせた。
振り返ったりして辺りを見渡すも、
明智どころか誰もおらず(眠らずの番以外)もちろん明智の気配は微塵も無い。


暫くして…それが幻聴だと気付き、羞恥に頬を染めた。

「わ、我が幻聴など…っ…」


最近になっては不意に明智を思い出すようになっていたのは慣れてはいたが、
幻聴…つまり空耳は初めての事で、戸惑い、動揺を感じた。


「……明智…」


己に触れた指先、
さらりと目敏くまとわりつく髪、
地獄に誘うかのように囁く声、
腫れ物を扱うかのように抱き締める腕、
地に引きずり込まれるような瞳、
…とにかく、明智の何もかもが脳内に溢れ、躯が熱に震えた――否、奮えた。

己がこんなにも明智光秀という存在に、心や体の隅々までもが侵食されているという事に、
後悔というか、疑問というか、動揺というか…、なんともいえない複雑な気持ちになる。


「この我を貴様の色に染めた事、どんな重罪より重い罪ぞ…」

悪態を呟くも、本人に直接言ったら精神的ダメージを与えるどころか恐らく、
いや絶対に悦ぶのだろうと計算づき溜息が出た。




今夜は明智来るだろうか。

来たら来たで、
「また来たのか」とか「毎日毎夜飽きないのか」などと嫌みしか言えないのだが、
本当は密かに、明智が来るのを密かに、明智が来るのを毎夜嬉しく思い楽しみにしている。
来てくれて嬉しい、などと明智に言ったら負けなような気がして、絶対に言わないのだが。
それでも最近は少しだけ嬉しいと言えるようになってきたと思う。

そしていつの間にか情事に誘われるような雰囲気になるのも別段、嫌では無い。
寧ろ心の隅で常に期待をし、望んでいる。
だが、そんな事を言えるような口や性格ではなく、
いつも「やめろ」だとか「嫌だ」とか「盛るな」などと拒絶の言葉しか出ない。
故に、「では止めましょうか…」と言われ行為が中止になることもある。

嗚呼…違うのに
本当は無理矢理にでも犯されて、壊れるくらい好きにされたい、
己が愛されていると感じたいと願っているのに。
最初は和姦――だと感じたが明智はそうではなかったらいし――から始まった己と明智の関係だが、
今では愛され気遣われながら行為を進められていると感じる。
とはいえ、最近は少し乱雑に扱われてみたいと思う時がある。
別に被虐体質などとは断じて違うのだが。




…本心を、上手く表現出来ぬ。


もどかしいもどかしい、もどかしい。
もどかしくて、心の臓に針が刺さるような痛みに襲われる。




こんなにも上手く自分の本音を言いたい、伝えたいと思い始めたのは
明智と出会ってから生まれた気持ちの一つ。
明智が己を…狂わせる。

素直になれたらどんなに楽な事か…






家臣の慌てた足取りで走り来る足音が聞こえてきた。

「元就様、明智光秀が城に、」

「騒ぐでない」



胸が、高鳴る。
家臣に無駄な被害が出ないようにと、自室周辺の人払いを命じた。
駆け足で去って行く家臣を一警し、身を翻して寝床へと歩を進める。


無駄な被害を出さないように、というのは表向きな理由であり
本当の理由は何時そういった事…つまり色事があっても大丈夫なように、だ。

大毛利家当主に衆道趣味があるなどと世に知れ渡っては毛利家の恥。
とはいえ、己に衆道趣味が本当にあるという訳ではなく、他の者から見ればそういった趣味があると認識されるという意味だ。




足音をたてずに近付く僅かな気配に、目を細めて笑みを浮かべた。

今夜はどう我を楽しませてくれよう…?





End

あとがき


明智に侵食され、明智に依存してるという感じのお話…を書きたかったハズなのに…
ええ、なんかただのノロケですね(苦笑)
そして最後は途中放棄ではなくあえて途中でストップしてるのですよ。

いやはや…自分が光就にハマるとは思ってもいなかった…
多分茶の影響…かな?



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プロフィール

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堕天使エレナ
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性別:
女性
職業:
学生
趣味:
絵描き 執筆 読書 ゲーム 寝る 妄想 便せん作り
自己紹介:
うえのイラスト画像はいただきもの。
オンラインでは執筆を
オフラインではイラスト中心に活動中デス
ギャルゲー、音ゲー、RPG系、シュミレーションゲームが好き
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