ビスケット通信
小説(とたまに絵)を書いてるブログです。 現在更新ジャンルは本館で公開した物の再UP中心。 戦国BASARAやお題など。
カテゴリー「戦国バサラ」の記事一覧
- 2025.04.20
[PR]
- 2010.03.14
甘味が似合うツンデレラ1(光就/就誕)
- 2010.03.13
その領域には届かない(光就前提の親→就/お題)
- 2010.02.22
助けてあげましょう。特別にね(光就)
- 2010.01.15
闇に囚われた光(?→元就/シリアス)
- 2010.01.15
09゛ハロウィンSS2(光就/甘)
甘味が似合うツンデレラ1(光就/就誕)
- 2010/03/14 (Sun)
- 戦国バサラ |
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★ 甘味が似合うツンデレラ1 ★
「何故失敗するっ!」
オーブンレンジの前でじたんだを踏む。
中には、萎んだ茶黒い塊がぷすぷすと煙を
あげており、キッチンには酷く焦げ臭い匂い
と黒煙が立ち込めていた。
何か黒い塊…クッキーに成るはずだった塊
をゴミ箱へと投げ入れる。既にゴミ箱の中に
は失敗した物が溜まりに溜まっていた。
――何故こうも、ただの菓子如きに、
我が苦戦せねばならぬ…
昔から、何をやっても器用にこなし褒めら
れていた元就だが、菓子作りは不向きな事は
自覚している。否、それ以前に、料理すらま
ともに作ったことも無い。
日々の食事は、コンビニの弁当や出前など
の即製品で済ましていた故、まさかこの歳に
なって菓子を作るとは思ってもいなかった。
やはり斯様な女々しい事、男には出来ぬの
だとぼやき、元就はシンクの台に突っ伏した
い気分になった。が、散乱する器具やら材料
がそれを拒む。更に虚しくなって、深い深い
溜息を吐いた。
そこでハッと時間の事を思い出した。
見上げた時計の短針と長針が示す現在時刻
は、午後3時丁度。光秀が来るのは4時半。
あと1時間半しか無い。新たに作り直すのに
はかなり厳しい。
冷蔵庫で未だ本来の役目を果たされずに、
生クリームや果物が程よく冷やされて入って
いる。適当にそれらをどうかしてみようかと
考るも、全くの料理初心者の元就には何も
思い浮かばない。
考えてもただ時間が過ぎてゆくばかりで、
仕方なく散らかったキッチンに背を向ける。
とりあえず、軽く部屋の片付けでもしようか
とその場を後にした。
事の次第は、先月バレンタインという行事
をすっかり忘れていて、光秀から貰うだけに
終わった事と、今日がホワイトデーだったと
いう事をまたも忘れていた事が、慌ただしく
している理由。
即製品の飴や何かで返しても良かったのだ
が、せっかく光秀が手作りでチョコを作って
くれたのだから此方も手製で返さなければい
けないような、気がした。立ち寄った駅前の
書店で、菓子作りの本を手当たり次第に読み
漁った上そのうち数冊を購入し、スーパーで
材料を買い、家に帰り作り始めたは良かった
のだが失敗続き。
そして冒頭に至った次第。
「ふぅ…この程度で良いか…」
所隅々まで綺麗に掃除され、片付けられた
室内を見て満足感に浸る。とはいえ、元就の
部屋には、元から家具や小物などがそれほど
置いてなく、几帳面に毎日大掃除並の掃除を
しているのだが。
――りん
ふと鈴の音が聞こえた気がした。
――リーンローン
否、チャイムの音だった。
片付け終わった室内へ響いたチャイムに、
スリッパをパタパタと音をたてながら、ドア
を開けに行く。
「元就公、開けて下さい」
とんとんとん、と小さく数回叩かれた。
インターホンがあるにも関わらず、ドアを
叩くのは元就がそうしろと命じたから。元就
にはインターホンがうるさいと感じての事。
それでも、光秀は念のためと最初に一度チャ
イムを鳴らしてからドアを叩く。
一応覗き穴で光秀だということを確認し、
チェーンロックを外す。ドアを開けた目前に
広がる青白。否、明智光秀。正方形の、白い
箱を片手に笑顔を見せていた。
元就と光秀が会うのは約1ヵ月ぶり。バレ
ンタイン以来。その間どれほど会いたかった
かと、光秀は抱きつきたい衝動を堪え、唇に
挨拶程度ねキスをする。
「お誕生日、おめでとうございます」
そう告げれば、元就はきょとんとした。
「今日誕生日でしょう…お忘れですか?」
「あ、あぁ…そうだった…」
ホワイトデーだ何だと慌てていた為元就は
自分の誕生日という事に気付かなかった。
第一誕生日を祝ったり喜んだりしたことは
なく、おめでとうなどと、子供の頃以来から
久しく聴いてなかった言葉に何処かこそばゆ
さを覚えた。
「と、兎に角入れっ」
部屋に引き入れられ、否、引き摺り込まれ
急な事で多少驚いたが、光秀はなんとか靴を
脱ぐことには成功した。
…一瞬だけ見えたキッチンに、光秀は目を
瞑り見なかった事にした。
――――――――
next2へ
「何故失敗するっ!」
オーブンレンジの前でじたんだを踏む。
中には、萎んだ茶黒い塊がぷすぷすと煙を
あげており、キッチンには酷く焦げ臭い匂い
と黒煙が立ち込めていた。
何か黒い塊…クッキーに成るはずだった塊
をゴミ箱へと投げ入れる。既にゴミ箱の中に
は失敗した物が溜まりに溜まっていた。
――何故こうも、ただの菓子如きに、
我が苦戦せねばならぬ…
昔から、何をやっても器用にこなし褒めら
れていた元就だが、菓子作りは不向きな事は
自覚している。否、それ以前に、料理すらま
ともに作ったことも無い。
日々の食事は、コンビニの弁当や出前など
の即製品で済ましていた故、まさかこの歳に
なって菓子を作るとは思ってもいなかった。
やはり斯様な女々しい事、男には出来ぬの
だとぼやき、元就はシンクの台に突っ伏した
い気分になった。が、散乱する器具やら材料
がそれを拒む。更に虚しくなって、深い深い
溜息を吐いた。
そこでハッと時間の事を思い出した。
見上げた時計の短針と長針が示す現在時刻
は、午後3時丁度。光秀が来るのは4時半。
あと1時間半しか無い。新たに作り直すのに
はかなり厳しい。
冷蔵庫で未だ本来の役目を果たされずに、
生クリームや果物が程よく冷やされて入って
いる。適当にそれらをどうかしてみようかと
考るも、全くの料理初心者の元就には何も
思い浮かばない。
考えてもただ時間が過ぎてゆくばかりで、
仕方なく散らかったキッチンに背を向ける。
とりあえず、軽く部屋の片付けでもしようか
とその場を後にした。
事の次第は、先月バレンタインという行事
をすっかり忘れていて、光秀から貰うだけに
終わった事と、今日がホワイトデーだったと
いう事をまたも忘れていた事が、慌ただしく
している理由。
即製品の飴や何かで返しても良かったのだ
が、せっかく光秀が手作りでチョコを作って
くれたのだから此方も手製で返さなければい
けないような、気がした。立ち寄った駅前の
書店で、菓子作りの本を手当たり次第に読み
漁った上そのうち数冊を購入し、スーパーで
材料を買い、家に帰り作り始めたは良かった
のだが失敗続き。
そして冒頭に至った次第。
「ふぅ…この程度で良いか…」
所隅々まで綺麗に掃除され、片付けられた
室内を見て満足感に浸る。とはいえ、元就の
部屋には、元から家具や小物などがそれほど
置いてなく、几帳面に毎日大掃除並の掃除を
しているのだが。
――りん
ふと鈴の音が聞こえた気がした。
――リーンローン
否、チャイムの音だった。
片付け終わった室内へ響いたチャイムに、
スリッパをパタパタと音をたてながら、ドア
を開けに行く。
「元就公、開けて下さい」
とんとんとん、と小さく数回叩かれた。
インターホンがあるにも関わらず、ドアを
叩くのは元就がそうしろと命じたから。元就
にはインターホンがうるさいと感じての事。
それでも、光秀は念のためと最初に一度チャ
イムを鳴らしてからドアを叩く。
一応覗き穴で光秀だということを確認し、
チェーンロックを外す。ドアを開けた目前に
広がる青白。否、明智光秀。正方形の、白い
箱を片手に笑顔を見せていた。
元就と光秀が会うのは約1ヵ月ぶり。バレ
ンタイン以来。その間どれほど会いたかった
かと、光秀は抱きつきたい衝動を堪え、唇に
挨拶程度ねキスをする。
「お誕生日、おめでとうございます」
そう告げれば、元就はきょとんとした。
「今日誕生日でしょう…お忘れですか?」
「あ、あぁ…そうだった…」
ホワイトデーだ何だと慌てていた為元就は
自分の誕生日という事に気付かなかった。
第一誕生日を祝ったり喜んだりしたことは
なく、おめでとうなどと、子供の頃以来から
久しく聴いてなかった言葉に何処かこそばゆ
さを覚えた。
「と、兎に角入れっ」
部屋に引き入れられ、否、引き摺り込まれ
急な事で多少驚いたが、光秀はなんとか靴を
脱ぐことには成功した。
…一瞬だけ見えたキッチンに、光秀は目を
瞑り見なかった事にした。
――――――――
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その領域には届かない(光就前提の親→就/お題)
- 2010/03/13 (Sat)
- 戦国バサラ |
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その領域には届かない。
氷で固められた、深い領域には。
それは何時も唐突だった。
「よう元就、何だ夜這いか?って、違うか」
何の連絡も無しに元就が会いに来るだなん
て事すら珍しいのに。部屋に飛び込んで来た
途端に、胸に顔を埋めてきた。それはまるで
子供が親にすがりつくような抱きつき方だ。
「ちょ、そ…か、べ」
たどたどしく稚拙に紡がれた元親の名。
元親はただただ驚くばかりで、動揺に頭を
かかえたくなった。でも、きっと元就に何か
あったんだろう。辛い事を言われたのかもし
れない酷い仕打ちにあったのかもしれない、
逆に、何か元就にとっては辛かった事をした
のかもしれない。慰めになるか分からなかっ
たが、せめての思いで、震える頭をゆっくり
と撫でた。
「元就…」
「ちょうそかべ、長曾我部、元親」
変わらず震えたままで、何度も何度も元就
は名前を呼ぶ。
撫でれば撫でるほどに元就の震えは悪化を
見せているようで、かといって止めるわけに
もいかず、ただ頭を撫でてやる事しか、出来
ない。それでも尚、元就は不安気な声で元親
の名を口にしていたが、そのうち落ち着いて
きたのか、我は、我はと、違う単語が混ざり
始めた。
「我は、我は何故、生きて、いる」
そんな唐突な質問をされて、困惑しない者
はいないだろう。何故生きているのかなんて
自分にもわからない。なのにそんな事を他人
に訊かれて答えられるはずもない。どう答え
ていいのかわからず、視線を宙に游がせた。
やがて元就の呼吸が荒く早く乱れが混じり
始め、涙が頬から流れた。
「なぁ長曾我部…我は何故生きている?」
「もとな…」
「わからぬ、分からぬ!
我は生きる価値が無い
あれがおらねば何のために生きているか
分からぬのだ
我が生きる価値を見出だしてくれるのは
唯一この世であ奴しかおらぬ
光秀ただ一人だけしかっ!」
答えを求めていなかったのか、元就は嫌だ
嫌だとただをこねる子供ねように首を左右に
振った。そして見上げた元就の切な気な瞳の
中に元親の姿は映っていない。
それが辛く哀しいと思ったが、最初から元就
の瞳に映る事なんて無に等しかったのだ。
そう気付いたのはいつ頃だっただろうか。
そんな思いにふける元親にも構わず、元就
がドンドンと元親の胸板を叩くのは、明智へ
の怒りなのかはたまた哀しみの悲痛な叫びな
のか。元親はそれを黙って受け止める事が、
精一杯の宥めだと思った。
「なのになのにっ!
我は…… 何故…何故?
何故だ何故だどうして我は
国を捨てるという判断もあったのに、
我はそれが出来なかったのだ!
光秀…光秀…」
元親には名を口にしたくない程に気にくわ
ない男の名前を、元就はただ一心不乱に叫ぶ
ばかりでまともに此方を見てくれない。
元就が落ち着くまで抱き締めることしか
出来ないのが悔しい。
「我はあれがおらねば何も出来ない
あやつが居ぬ限り笑えぬ、作り笑いをする
事も出来ぬのだ!まともに仕事をする事も
手につかぬし呼吸をする度に光秀の苦痛を
感じるようで苦しくて息もままならぬ!!
どうしたら良いのだ長曾我部、
我は、我は光秀がなき後も奴からはのがれ
られぬ いまも、昔も、これからもだ!
あやつからは逃げられぬッ…」
胸にしがみつく指が握られて服が締め上げ
られる。布越しとはいえ爪が皮膚に食い込ん
で痛みを伴う。
「夜な夜なあやつが泣くのだ枕元で、
我の名を刹那に呼ぶのだ
痛い痛いと、嘆くのだ
だが我は何も出来ぬ。見ていることしか…
我はあやつを助けてやることも出来ぬ
あれを葬ったのは我なのに
我なのに!!」
厳島の惨劇が元親の脳裏を過る。
血に濡れた元就と、こと切れた明智。下唇を
噛み締め涙を流す元就は、今にも輪刀で自ら
を切りつけて、自害をする瞬間だった。それ
を止めた元親。抵抗する元就を気絶させ連れ
帰ったのは良かったが、数日間は錯乱状態で
手のつけようが無かった。
織田信長の命で瀬戸内に攻め入った、明智
光秀率いる織田軍。きっと明智は、最初から
元就を殺める気は無かったのだと元親は考え
ている。だけど元就は自分の守るべき国を、
恋人とはいえ多軍に攻め入らせる事は出来な
かったんだろう。
恋人を已む無くといえ殺めてしまった事を
元就は何時までも後悔している。前を見れず
後ろばかりを見て、進む事を拒んでいる。
「長曾我部我を助けよ
助けよもとちか我を助けてくれ
元親、頼むから
たすけて たすけて我を助けてくれ
ころせ我をたすけよ
助けよ 殺してくれ 頼むもとちか
われをあいしているのならば我を助けよ
ちのそこからすくいだしてみせよ
頼む助けてくれ!
殺してくれもとちか頼むから!
たすけて助けて助けてたすけてくれッ」
錯乱した元就にはどんな声も届かない。
だけど、そんな元就を昔から変わらずに今も
愛し続けている。だからこそこうして黙って
抱き締めているのに。
「やはりお前もわれを見捨てるのか
母上と同じように愚かに見捨てていくのか
我が怖いのか恐ろしいのか不浄なる狂気を
交えた穢らわしい血が流れている我が
忌々しい関わりたくないと思うのか
そうだろう長曾我部?
やはり我が嫌なのだろう?
だから貴様は助けないのだこの苦しみから
解いてもくれぬのだ すべて我には
分かっている分かっているのだ!」
「お前は、不浄なんかじゃねぇよっ…」
やっと紡いだ言葉すら、前向きに受け取っ
てはくれない。助けたいのに助けられない。
元就を楽にさせてやりたい、だけどそれは
出来ない。元就が望む救世主は此処にはいな
いのだから。
「だったら何故我を助けてはくれぬのだ
この苦しみから痛みから我を解放してくれ
ぬのだ。 やはり、
我をあいしていないからだろう 怖いのだ
ろう
汚ならしい血が、あの光秀を殺めた、
我が、嫌なのだろう?
だから貴様は我を助けぬ! 殺さぬ!
ああ殺してくれこの不浄な血を絶ってくれ
我を殺してくれ、
光秀のおらぬ世に未練は無いのだ元親
だからこの穢れた血が流れた身から解放し
てくれ頼む元親我を殺せ、殺せ
我を、殺してくれ
頼む…頼むからっ…
ころしてくれ、たのむ…ちか…ちか」
ぷつりと、糸が切れたように元就は静かに
なった。
「元就?…良かった…死んじゃいねぇか…」
叫び疲れたのか、精神的に限界だったのか
元就は目を瞑って、穏やかに寝息をたてて
いた。辛そうな顔をしながら、意識を手放し
て尚も涙を流し続ける元就の涙を指で拭う。
「元就、前を見てくれ…俺を見てくれよ…
こんなにもお前を心配しているんだ
なぁ、生きてくれよ…お前を殺すなんて、
俺には出来ないんだ…元就…」
抱き締める腕に力をこめた。
死なないでくれと刹那に願いながら。
いつか元就が戦場で見せた輝きを、脳裏に
思い浮かべながら。
―――――――――終
2010/3/12
『その領域には届かない』
お題配布元… 月と戯れる猫 様
氷で固められた、深い領域には。
それは何時も唐突だった。
「よう元就、何だ夜這いか?って、違うか」
何の連絡も無しに元就が会いに来るだなん
て事すら珍しいのに。部屋に飛び込んで来た
途端に、胸に顔を埋めてきた。それはまるで
子供が親にすがりつくような抱きつき方だ。
「ちょ、そ…か、べ」
たどたどしく稚拙に紡がれた元親の名。
元親はただただ驚くばかりで、動揺に頭を
かかえたくなった。でも、きっと元就に何か
あったんだろう。辛い事を言われたのかもし
れない酷い仕打ちにあったのかもしれない、
逆に、何か元就にとっては辛かった事をした
のかもしれない。慰めになるか分からなかっ
たが、せめての思いで、震える頭をゆっくり
と撫でた。
「元就…」
「ちょうそかべ、長曾我部、元親」
変わらず震えたままで、何度も何度も元就
は名前を呼ぶ。
撫でれば撫でるほどに元就の震えは悪化を
見せているようで、かといって止めるわけに
もいかず、ただ頭を撫でてやる事しか、出来
ない。それでも尚、元就は不安気な声で元親
の名を口にしていたが、そのうち落ち着いて
きたのか、我は、我はと、違う単語が混ざり
始めた。
「我は、我は何故、生きて、いる」
そんな唐突な質問をされて、困惑しない者
はいないだろう。何故生きているのかなんて
自分にもわからない。なのにそんな事を他人
に訊かれて答えられるはずもない。どう答え
ていいのかわからず、視線を宙に游がせた。
やがて元就の呼吸が荒く早く乱れが混じり
始め、涙が頬から流れた。
「なぁ長曾我部…我は何故生きている?」
「もとな…」
「わからぬ、分からぬ!
我は生きる価値が無い
あれがおらねば何のために生きているか
分からぬのだ
我が生きる価値を見出だしてくれるのは
唯一この世であ奴しかおらぬ
光秀ただ一人だけしかっ!」
答えを求めていなかったのか、元就は嫌だ
嫌だとただをこねる子供ねように首を左右に
振った。そして見上げた元就の切な気な瞳の
中に元親の姿は映っていない。
それが辛く哀しいと思ったが、最初から元就
の瞳に映る事なんて無に等しかったのだ。
そう気付いたのはいつ頃だっただろうか。
そんな思いにふける元親にも構わず、元就
がドンドンと元親の胸板を叩くのは、明智へ
の怒りなのかはたまた哀しみの悲痛な叫びな
のか。元親はそれを黙って受け止める事が、
精一杯の宥めだと思った。
「なのになのにっ!
我は…… 何故…何故?
何故だ何故だどうして我は
国を捨てるという判断もあったのに、
我はそれが出来なかったのだ!
光秀…光秀…」
元親には名を口にしたくない程に気にくわ
ない男の名前を、元就はただ一心不乱に叫ぶ
ばかりでまともに此方を見てくれない。
元就が落ち着くまで抱き締めることしか
出来ないのが悔しい。
「我はあれがおらねば何も出来ない
あやつが居ぬ限り笑えぬ、作り笑いをする
事も出来ぬのだ!まともに仕事をする事も
手につかぬし呼吸をする度に光秀の苦痛を
感じるようで苦しくて息もままならぬ!!
どうしたら良いのだ長曾我部、
我は、我は光秀がなき後も奴からはのがれ
られぬ いまも、昔も、これからもだ!
あやつからは逃げられぬッ…」
胸にしがみつく指が握られて服が締め上げ
られる。布越しとはいえ爪が皮膚に食い込ん
で痛みを伴う。
「夜な夜なあやつが泣くのだ枕元で、
我の名を刹那に呼ぶのだ
痛い痛いと、嘆くのだ
だが我は何も出来ぬ。見ていることしか…
我はあやつを助けてやることも出来ぬ
あれを葬ったのは我なのに
我なのに!!」
厳島の惨劇が元親の脳裏を過る。
血に濡れた元就と、こと切れた明智。下唇を
噛み締め涙を流す元就は、今にも輪刀で自ら
を切りつけて、自害をする瞬間だった。それ
を止めた元親。抵抗する元就を気絶させ連れ
帰ったのは良かったが、数日間は錯乱状態で
手のつけようが無かった。
織田信長の命で瀬戸内に攻め入った、明智
光秀率いる織田軍。きっと明智は、最初から
元就を殺める気は無かったのだと元親は考え
ている。だけど元就は自分の守るべき国を、
恋人とはいえ多軍に攻め入らせる事は出来な
かったんだろう。
恋人を已む無くといえ殺めてしまった事を
元就は何時までも後悔している。前を見れず
後ろばかりを見て、進む事を拒んでいる。
「長曾我部我を助けよ
助けよもとちか我を助けてくれ
元親、頼むから
たすけて たすけて我を助けてくれ
ころせ我をたすけよ
助けよ 殺してくれ 頼むもとちか
われをあいしているのならば我を助けよ
ちのそこからすくいだしてみせよ
頼む助けてくれ!
殺してくれもとちか頼むから!
たすけて助けて助けてたすけてくれッ」
錯乱した元就にはどんな声も届かない。
だけど、そんな元就を昔から変わらずに今も
愛し続けている。だからこそこうして黙って
抱き締めているのに。
「やはりお前もわれを見捨てるのか
母上と同じように愚かに見捨てていくのか
我が怖いのか恐ろしいのか不浄なる狂気を
交えた穢らわしい血が流れている我が
忌々しい関わりたくないと思うのか
そうだろう長曾我部?
やはり我が嫌なのだろう?
だから貴様は助けないのだこの苦しみから
解いてもくれぬのだ すべて我には
分かっている分かっているのだ!」
「お前は、不浄なんかじゃねぇよっ…」
やっと紡いだ言葉すら、前向きに受け取っ
てはくれない。助けたいのに助けられない。
元就を楽にさせてやりたい、だけどそれは
出来ない。元就が望む救世主は此処にはいな
いのだから。
「だったら何故我を助けてはくれぬのだ
この苦しみから痛みから我を解放してくれ
ぬのだ。 やはり、
我をあいしていないからだろう 怖いのだ
ろう
汚ならしい血が、あの光秀を殺めた、
我が、嫌なのだろう?
だから貴様は我を助けぬ! 殺さぬ!
ああ殺してくれこの不浄な血を絶ってくれ
我を殺してくれ、
光秀のおらぬ世に未練は無いのだ元親
だからこの穢れた血が流れた身から解放し
てくれ頼む元親我を殺せ、殺せ
我を、殺してくれ
頼む…頼むからっ…
ころしてくれ、たのむ…ちか…ちか」
ぷつりと、糸が切れたように元就は静かに
なった。
「元就?…良かった…死んじゃいねぇか…」
叫び疲れたのか、精神的に限界だったのか
元就は目を瞑って、穏やかに寝息をたてて
いた。辛そうな顔をしながら、意識を手放し
て尚も涙を流し続ける元就の涙を指で拭う。
「元就、前を見てくれ…俺を見てくれよ…
こんなにもお前を心配しているんだ
なぁ、生きてくれよ…お前を殺すなんて、
俺には出来ないんだ…元就…」
抱き締める腕に力をこめた。
死なないでくれと刹那に願いながら。
いつか元就が戦場で見せた輝きを、脳裏に
思い浮かべながら。
―――――――――終
2010/3/12
『その領域には届かない』
お題配布元… 月と戯れる猫 様
助けてあげましょう。特別にね(光就)
- 2010/02/22 (Mon)
- 戦国バサラ |
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ああ腹立たしい腹立たしい。
何が好きでこうも狭苦しい場所に居ねばなら
ぬのだ。
清く正しい毛利の衛兵が、鍛え上げた兵が、
たかが織田の遊女ごときにたぶらかされ出し
抜かれるなぞなんたる不始末、不祥事。
眼下にあったにも関わらず視野に捉えていな
んだ事は、取り返しのつかぬ失態。
それはひとまず棚に上げたとしても、織田の
考えには全く理解が出来ぬ。徳川や独眼竜の
ように、天下を取り安国とするため状勢統一
しようという考えならば少しは分かるような
気もするが、むやみに他国を潰す織田の素行
を見る限りあれはただの武力暴行としか思え
ない。
織田の放った手駒もかなりの荒武者だった。
この我が、全く行動を予測出来ぬ程に意外な
動きをする者で、向こう見ずの無鉄砲な者か
と思えば我が張り巡らした策を、いとも容易
く掻い潜り抜ていった強者。
配置された各部隊を、次々と壊滅させていく
様には心底寒気がしたものだ。
どんな屈強たる兵を引き連れた武将かと此方
から出向きその面を拝んでみれば、ただなら
ぬ異様さを放つ者が一人で斬りかかってくる
し部下は見当たらずと目を疑った。
そして気がつけばこうして狭苦しい牢にいる
という有り様。覚えているのは目前に迫った
不敵な笑みと峰打ちの痛みくらいか。
あれは思い出すだけで眉をしかめたくなる。
「毛利殿、長らくお待たせしてすみません」
先日戦場で見た時と同じ格好、得物を両手に
していた。側にいる家臣は脅えた表情で灯り
の蝋燭を手にしている。
「漸く我を殺しに来たか」
きつく睨み付けながら、そういえば此処に
来て初めてまともに口を開いたと気付く。
「いえ、それはまたいつかゆっくりと…
今日はこれから宴があるので…素敵な宴が
ね…ですので、貴方を特別に
此処から出してあげましょう」
奴の持つ二本の鎌が、射し込む光のほとんど
ない暗闇で妖しげに煌めく。
「宴…?」
「えぇ、楽しい楽しい宴ですよ」
【宴】と聞けば、普通は酒を呑み交わす事を
意味する筈だが、この者が言った【宴】は、
些か悪意に満ちたような、それでいて高潮感
を含んでいて、どことなく何かを予感させる
ものだ。
それに何故【宴】だからと此処から出られる
のかが分からない。
命令された家臣が持っていた鉄格子の施錠を
開け、「さあどうぞ…」と出るように促され
る。一体何が目的なのか意図が不明で動いて
良いものか判断しかねる。
罠にしては奴の意識が我には無く見え、その
目には更なる別の目標物を捉えているように
見える。邪悪な、何かが。
そして大して何の束縛もなく、簡単に逃走が
出来る姿で渋々後ろを追い歩き始める。
無警戒なのか、または習知の上での事なのか
は分からないが、無防備に後ろ姿を敵に見せ
るなど武士の風上にもおけぬと内心で悪態を
つく。
そして地上へ近くと共に、嫌に外が騒がしい
と気付いた。
――何かが可笑しい。
「騒がしい…」
「ククク…ですから…『宴』ですよ…」
わずかに呟いた言葉に目敏く反応を返された
事が気に障るが、奴が先ほどから発している
宴という言葉が気にかかった。
尋ねて良いものかと暫し考える。とはいえ、
そう長く考えている訳ではなく、ものの数秒
の時間だ。我にとってはだいぶ長い時間考え
ていたといえる。
「宴とは――」
口を開いてから、【宴】が何かを知る。
何もかもが燃えていた。
暗い夜空が赤く染まり、火の粉が辺りにちら
ちらと舞っていた。
「―――綺麗でしょう?
本能寺は実に美しく燃えるものですね…」
確か、織田軍が主領地としていた中に本能寺
という建造物があったのを脳内に広げた地図
から思い出す。
だが奴は――明智光秀は、あの魔王と名高い
織田信長が一目置く家臣の一人の筈だ。それ
が主君に牙を見せている。だとすればこれは
立派な反乱ではないか。
「何故、世界の全てを手にしてしまえる程の
器量を持った織田に刃向かう」
知らぬうちに口から紡がれていた言葉に、
明智はこの状況が実に楽しいと言わんばかり
の笑みを口元に携えて答える。
「簡単ですよ…私はあの方と戦ってみたい、
倒してみたい、通った血を見、肉を裂いて
みたいという…その欲望のみで、信長公に
仕えていたまで」
「それに私は天下などに興味はありません」
初めから忠誠など無く、ただの標的としか
見ていなかったという事か。己の欲望のみの
為に仕えその首を断つ機会を始終伺っていた
とは、今の乱世ありふれた話とはいえこの者
だと尚更恐ろしい気がする。
ただでさえ、邪気に加えて更にはただならぬ
死臭を漂わせているのだから。それをまとも
に受けていた織田も相当の者といえようが。
「少し、信長公と遊んできます」
燃え盛る本能寺。
奴は其処に向かう、気狂いの狂人。
「どうです、貴方もご一緒しませんか?」
愉しげに振り返った。
浮かべる笑みは、さながら狩りをする悪魔と
云えようか死神と例えようか。
「下らぬ事に巻き込むな」
「そうですよね…まぁ…逃げるも国に帰るも
何処へなりと行きなさい。
宴が終わり、もし私の気が向いたその時は
探して逢いに行きますので…
…貴方をゆっくりと味わう為に、ね…」
細められた眼に、奮えと殺意が混じる。
――なればその時は、この我に一日といえど
屈辱を味会わせた罪を晴らしてくれよう。
そう殺気を込めて言い返せば、愉しげに笑み
を見せて、奴は最上の宴へと向かった。
踵を翻す。
安芸に戻る為に。安芸と、毛利を守る為に。
明智を迎え撃つ為に。
その時が来るまでこの命、何人たりと奪わせ
ぬと腹に決めた事は、生涯忘れなかった。
―――――――――――――――終
2010/2/15
『助けてあげましょう。特別にね』
お題配布元… 月と戯れる猫 様
――――――――――後記―――
本能寺の変ですね、えぇ。一度こういうネタ
を書いてみたいなと思っていたんですよ。
因みに執筆中BGMは「眠れ緋の華」です。
毛利は死ぬまで明智を待っていたんですよ…
きっと。まぁ結局病気には勝てなかったそう
ですからね…神を恨んだでしょうねぇ…
というか、お題がいかせてない(^人^;)
捕らえた毛利を逃がす話が書きたかったのに
いつの間にか本能寺の変の話が主体になって
いたという不思議(苦笑)
闇に囚われた光(?→元就/シリアス)
- 2010/01/15 (Fri)
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※誰かに監禁されてますが別に痛くない。
相手はご自由に想像して下さいな……
トントントン
扉を叩く音で、意識を覚醒させられる。
今が朝方なのか、昼間なのか、夜なのか辺り
は真っ暗で全く判らないのだが、外から聴こ
えてくる鈴虫の音色からして、今は夜間なの
だろう。
トントントン
「…何用」
もう一度、扉を叩く音。
今度は返事を返した。
ここに来た初め無視して返事を返さなかった
頃もあったが、返事を返さねば食事は愚か水
すらも与えられぬのかと理解して、それ以来
最低でも二度目には返事を返すようになって
いる。
されど扉が開く事はなく、扉の向こに居る者
から返答が帰ってくる事も無い。何をする訳
でもなく、其所に立っているだけだ。
時より、食事を持って来る時以外にも誰かは
来る。おおよそ見回り、見張りだろう。
嗚呼、そういえば最近日輪を拝んでいない。
いい加減黴が生えそうだ。
「今日は、晴れていたか」
トン
扉が一度叩かれる。
今日は晴れていたようだ。
良い日輪日和だったらしい。
…ここで得た事といえば、食事の時は五回、
見回りの時は三回、此方が質問した事に対し
てそうである場合は一回、そうではない時は
二回、帰る時は四回、相手は扉を叩くという
事と、扉の向こうの者は殺気を持たないこと
からして我を殺す気は無いという事。
何故殺されぬのか、問おうにも決して答えが
返ってくることはないため聞くのは無駄だと
諦めた。
ならば、我に何らかの利用価値があるか?
当主とはいえただの毛利家の一駒に過ぎぬ。
自分の価値、など考えても何も利は出ない。
例え外の者に相手に利があるよう交渉を持ち
掛けようにも相手が我に何を求めているのか
分からなければ、策の打ちようもない。
ここに入れられてから幾日、幾月経ったのか
もう既に数えるのは辞めている。知りたいな
どとも思わなくなった。
それだけ
生い立ちは何だったか、思い出せぬ。
毛利が戦に負けた?就寝中の奇襲?
それとも家臣の反旗か?
忘れた。
思い出したくもない。
「貴様は竹中か?」
答は、無い。
「貴様は長曽我部か?」
答は、無い。
「貴様は松永か?」
答は無い。
「貴様は、明智か?」
やはり、答は無い。
「貴様は、」
トントントントン
質問しようとして、まるでそれを遮るかのよ
うに四回、扉を叩く音が聴こえた。小さく舌
打ちを返せば、相手が薄く笑ったような気が
し、怒りを越えて肩の力が抜ける。
外界との接触が絶たれた。
我はまた一人だ。
壁に寄り掛かり、毛布を手繰りに寄せた。
寒い。季節がもう冬に近いのだろうか。だと
したら凍死するやもしれぬ。別に、それでも
構わない。何だって良い。この下らぬ日々に
終演を迎えられるのならば。
終わり
―――――――――
本館にUPしたもの。
相手は風魔か、久秀か、光秀なのか半兵衛か…妄想は無限。
09゛ハロウィンSS2(光就/甘)
- 2010/01/15 (Fri)
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目を覚ませば、夕闇に包まれている。
座ったまま寝ていたようだ。
温かく、て…
はて…今は10月の終わり、しかも外となれ
ば寒いような気がするのだが…
別に気にする事でもあるまいが、あまりこの
ような場所で寝ているのもいかぬ。
身を起こそうと身動ぎをしようとすれば、
自分に見ようない上着が掛けられいて、隣に
感覚があるのに気付く。
首を捻って視れば、己の肩に凭れて眠ってお
る者は、宵闇のような黒服を来た光秀。
足元で不穏な輝きを放つ、大鎌に目に入る。
黒服に大鎌とくれば死神と予想がついた。
このような大鎌のレプリカ、一体何処から
入手したのだ…
寧ろ…この大鎌は本物のような感じがするの
は気のせいなのだろうか。
否、本物など未だ見たこともないが。
それよりも、何故これが此処に居る。
何故我に上着を掛け、待っているつもりがい
つしか自身まで眠ってしまう程に、待ってい
たのだ…
まさか、光秀のような者がハロウィンなどと
いう子供臭い行事ごときで、他の輩のように
騒ぐような性格ではあらぬはずだが、死神の
ような仮装をしておるという事はやはりハロ
ウィンに参加したいという事なのか。
全くもって理解出来ぬ。
「ぅ、んん…あぁ…元就公…
起きましたか……」
寝惚け眼で見上げられる。
寝冷えでもしたのか、発色の悪い肌が寒さで
更に白く見えて、思わず上着を掛け返す。
「上着、返すぞ」
…別に良心ではない。ただ、冷えて風邪でも
引かれたら後で看病しろだの言われるのが
面倒だからだ。
ほくほくと暖かそうな表情を浮かべている。
こちらまで暖かいような気になるのは、なん
ともよく解らぬ。
「あの…Trick or Treatです」
大鎌を手に取り何かと思えば、ハロウィン
恒例の言葉が聞こえ。あまりにも普段の様子
からは似合わぬゆえ、笑ってしまいそうだ。
この光秀だけに、普段はやらぬであろう悪戯
をすると考えると恐ろしい。
だが今は何もくれてやるものは無い。
「今は何も無い」
「おや…では……悪戯をしなければねぇ…」
どこか目付きが鋭い気がするのは、我の目の
錯覚であると信じたい。
「…このような下等行事になど付き合えぬ
我は帰るぞ」
「え…」
家に隠り、誰にも会わねばそれでよい。
いや、これ以上誰か来る宛は今のところない
のだが。
帰路へと足を向ければ、付いてくる気配。
道中の視線などは、気にならぬのかこれは…
そう何分とも経たぬ内、家についてしまう。
確か、戸棚にまだ何かあったはずだ。
ドアノブを捻れば開いていて。
ああ、そういえば昼間竹中と長曽我部を残し
て逃げてきたのだった。
パタパタとスリッパの音。
よもやとは思うが…
「あ、お帰りー」
出迎えたのは竹中。
エプロンはもしや態々自家から持ってきたの
だろうか。
いや、長曽我部はどうした?
まさか竹中に負け追い払われたか。
…それはそれで手間が省けた。
後ろの光秀に痛い視線を向けられているが、
とにかくこの竹中を追い払わねば。
「帰れ」
「嫌だよ。それよりもさ…
何で、それがいるのかな?」
「それ…とは…私の事ですか?」
「ねぇ何で?元就君」
つじつまの合わない下手な嘘をついても、
気付くか気にしないかどちらか。
となれば上手く芝居を打つ必要がある。
だがそれには光秀の強力が必要となり、我が
求める言葉を選ぶかわからぬが、ひとつ、
懸けてみる他無い。
いつからか隣に居た光秀に視線を一瞬向けて
から、意を決め竹中に見せつけるようにして
腕を組む。
ああ…寒気がする…全く…
「今宵こやつと夜を共にするからだ」
「え……ええ、そうです。
今夜はじっくり元就公を味わうんですよ」
僅か動揺に狼狽えた様子を見せたが、すぐに
意図を察知したのか会話を合わせた。
期待通り、竹中はショックのあまり固まって
いる。
すぐに竹中を玄関から外へと押し出し、靴も
外に出してドアを閉めた。我に返った竹中が
自分も一緒になどと言いそうだと頭を過って
しまったゆえ。
鍵を閉め、チェーンロックもかける。
これで危機は去った。
が、背後から抱きすくめられる感覚に、嫌な
予感。
「では…早速味わうとしましょうかねぇ…」
「本気にするなっ!」
回避する暇もなく、あれよあれよという間に
抱き抱えられる。不覚。
ああ…やはり今朝真田に誘われた時共に向か
えば良かったか。それとも公園になど行かず
図書館にでも行けば良かったのだろうか…
今さら戸棚にあんみつの缶詰めがあったのを
思い出したが、今この光秀に何を申そうと
無駄なのであろう。
我は一体何をどう計り間違えたのだろうか…
終わり
―――――――――――――
2009/10/31に本館UP
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